断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

他なる種

 プレイヤーの意志が判定結果に反映されるルールとして、Otherkindを簡単に取り上げてみたいと思います。
 このゲーム、DitVのデザイナー氏が作ったのですけれど、ページ移転の際に関連ページが消失しています。半月ぐらい前に自分が調べたときはweb.archive.orgから手に入ったのですが、現在はアクセスできない状態です。Googleでotherkind.pdfを検索すれば本体は入手できるでしょう。


 鉄の力を手にした人間たちが、精霊の類を追い詰めていく。そんなファンタジー世界を背景として、PCたちは窮地に陥ったOtherkind(ドワーフ、エルフ、オーク、トロール、ただし外見や特質は一般的なファンタジーRPGのそれと異なる)となり、世界に残された精霊の宿る動物を守ったり、聖地を奪還したりして、いつかはElsewhereへと旅立つのです。
 人間は、Otherkindを害する鉄の力と、逆に親和的な月光の力を併せ持つ種族とされており、彼らとの交流や争いがコンフリクトを生み出すこととなります。
 魅惑的でひねりのきいたファンタジーなのですが、実験的であり、各所(例えばGMの役割など)が構築途中で放置されております。


 で、特徴的なのがルールです。
 このゲームの判定は、基本的にOtherkindの目的と人間の利害が対立したときに行われます。
 プレイヤーは六面体ダイスを4つ振り、それを「語り」「動作」「生命」「安全」に割り当てます。
 「語り(Narration)」は1-3ならGMが、4-6ならプレイヤーが何が起きたかを描写します。
 「動作(Motion)」は1-2ならPCの行動は失敗、3-4なら正負両方の要素が入り交じったり平凡な結果、5-6なら確実に成功へ向かいます。
 「生命(Life)」は1-2なら敵を全員殺害するか後遺症の残る傷を負わせ、3-4ならおそらく何人かは死亡する深傷を負わせ、5-6なら殺したり深い傷を負わせることなく事を収めます。(他者を害することはOtherkindに悪影響を与え、生命との繋がりが弱る結果をもたらす)
 「安全(Safety)」は1-2ならPCが重傷を負い、3-4なら負傷、5-6なら無傷で切り抜けることができます。
 各PCは3つの力(武器、コミュニケーション、その他)と生命との繋がりを、状況に応じて投入することが可能です。その場合は見分けがつくように別の色のダイスを最初の4つに加えて振ります。そして、好みの出目を割り振ることができます。ただし、これらの力のダイスが結果に割り当てられた場合は、描写に加えなくてはなりません。時にはGMからPCに有利な状況を表すダイスを、追加で与えられることもあるでしょう。
 人間やその関係するものは「鉄(これは物質的なものに限らず人間の持つ根源的な力の一つとされる)」の数値を持っており、Otherkindの「動作」と「安全」結果から同じ値を差し引き、悪い顛末をもたらします。Otherkindはこれに対抗するべく、「きらめき(Radiance)」を消費して鉄のペナルティを打ち消す事が可能です。
 あとはPCの協力や、神秘的なる地を変容させる判定などが書かれていますが、基本となるのは上記の通りです。


 このTRPGは欠ける部分もある小品なので、評価はできません。
 結果から何を選び、何を捨てるかをプレイヤーの手に委ねる(すなわち意志決定を行わせる)というルールは興味深いアイデアを提供していると思います。