断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

S7Sの背景世界リファレンス(3)

 七つの空の残り。
 どっちかっつーと、シナリオソース成分が多いので、もっと省略すべきですね。ぐすん。
 食事ネタが散りばめられており、この作者は食べること好きなんだろうなあ、と感じられるのが楽しいです。自分も料理を作るのが好きなので。


『七つの空』(後編)
石塊の空(the Sky of Stones)
 石塊の空の到来は、早秋の日々の徴です。石塊の空は、小石から山ほどの大きさまでの岩の浮かぶ広大な領域です。浮遊している理由は謎ですが、表面に刻まれた奇妙な縞(赤色、橙色、黄色、茶色)が関係していると思われます。鉱脈とも苔の一種とも言われているこの物質−朱き粉末−を、才能溢れる錬金術師とコルドゥンたちが数世紀にわたって研究していますが、まだすべての謎を解き明かすには至ってません。雲島と違い、これらの石は雲を隆起させたり霧に保護されたりしないのです。
 石塊は空と共に移動します。時にゆっくりと時に素早く。石同士が猛スピードでぶつかるとき、お互いに砕けて小さな岩になるかくっついて巨大な集まりに加わるかします。そして石が割れて開かれるとき、奇妙なものがこぼれ落ちます。銀貨の雨だったり、見知らぬ鳥の一群だったり、ぼんやりとした緑の水だったり、管弦楽団の音楽だったり、触手を持つ怪物だったりするのです。
 これらのことすべてが、石塊の空を通過する際の操縦を油断なら無いものにしています。石にぶつかって、帆柱や乗組員を失ったり、外装に穴が開いたり、砕けた石から逃れた奇妙なものによって恐ろしいことが起きたりするのです。密林の空の時と同様に、雲島の影響で経路は地図化されています。
 石塊の空は価値ある鉱石と宝石の源です。七つの空にある国の多くは、巨大な石の上−正確に言えば中−に、小さな長期採掘居住区を設営しています。中には財宝の残された失われた島クロイ(Kroy)の破片すらあるとされます。また、どの国とも関係のない放浪の採鉱者やトレジャー・ハンター、採掘者たちに様々なサービスを提供する放浪者の一団などがいます。水や食料、衣服や贅沢品、または奴隷労働者などの補給をこれら採掘者に輸送し、彼らが採掘したものを帰りに乗せることは、多くの冒険商人にとって儲かる商売です。
 採掘者居住区、輸送船、通過するだけの旅行者を襲うために、海賊もまた小さな貧民街と隠された港を設置します。そして時々、国家間の憎悪が採掘者たちの間で暴力となって火花を散らすのです。一例として、バラシ(Barathi)とヴァイリディス(Viridese)の採掘者は石塊の空で、お互いを略奪する習慣があります。輸送船から食料を奪ったり、追いやったり、地面への係留を解いたり、復讐騒ぎを起こしたりなど、争いは一般的です。
 石塊の空には、数種類の動物とそれよりは少し多い植物しか住んでいません。島の居住者に馴染み深い鳥と虫は、しばしば石に巣を作ります。ごたごた林檎(Brush Apples)とごしごし梨(Scrub Pears)は、柔らかな果実を硬く砂っぽい外皮に包んだ島にはない果物です。初めのうちは甘くクリーミーで、最後の方には苦く刺激的な味わいになります。あかり茸(Lamp Mushrooms)は、石に掘られた洞窟でぼんやりと緑がかった光を放ちます。食用には適しませんが、圧搾機にかけて得られる薄い油は錬金術やコルドゥンによって使用されます。ミューイェ苔(Muye Moss)は石の内と外に密集する赤っぽい植物で、虫や鳥がついばみますが、人間が食べても特に美味しいわけではありません。橙の棘(Orangethorns)は樽ほどの大きさの棘を持つ褐色の植物で、多くの石の表面にて雨水を内部にため込みます。岩の民(Rockmen)は石塊の空で希に目撃され、蒼き民のようにこの空の原始的な原住民と言われます。名前は、煉瓦のような赤色をした彼らの肌から来ています。岩から生まれ出た奇妙な異邦人、あるいは怪物であると主張するものもいます。しばしば、学者たちはこれらの存在を探し、お互いに矛盾した物語を持って帰ります。時には、採掘前哨地で襲撃が行われる際、海賊や他国の採掘者は岩の民を装い、自分たちの襲撃を偽装します。時折、採掘者の居住区が誰もいない空っぽの状態で発見されることがあります。壊れた武器とぺちゃんこになった弾丸以外、何が起きたのか手がかりになるものは見つかりません。


亡霊の空(the Ghost Sky)
 亡霊の空が近づくにつれ、気温が下がり始め、晩秋の始まりを告げます。
 亡霊の空を漂うものはほとんどありません。地虫凧が雲状の胞子をはき出すことで産卵し、虹色に煌めきます。あとは単体の旋転木、空鯨、石、漂流物などがちらほら見られるだけです。見通しがいい上に、風も強くなるため、この空の旅行は早く単純で、海賊の襲撃も避けやすいとされます。しかし、簡単かというとそうではありません。ここに住まう亡霊たちのためです。
 伝説によると、死後の世界へと行けない死者たちがこの空を彷徨い、風に乗せた泣き叫ぶ声と共に現れるよう宿命づけられているそうです。幽霊船員の乗った幽霊船の目撃談にも事欠きません。不安な死者にとりつかれたという話もあります。また、霊が物質に乗り移って動かし、攻撃してくると言うものもいます。
 船乗りの間には多くの迷信が伝えられ、幽霊の注意を惹かないようにしたり、避けるための助けとされています。それを守る限り、亡霊は船や船員を害することができませんが、もし決まりが一つでも破られれば、彼らは現れて生けるものたちに手ひどい嫌がらせを行うのです。残念なことに、迷信の数はあまりに多く、すべては矛盾しています。すべてを守ることは不可能なので、慣習として飛空船はそれぞれ一揃いの禁忌を守るようにしています。普通は、幽霊の脅威から船を守るには有効であるとされています。


凍霜の空(the Sky of Frost)
 凍霜の空の訪れは、雲島に冬をもたらします。真っ白なこの空は、風でのたうつ、純然たる雪、雹、みぞれで構成されています。伴うものが少ないのは亡霊の空に近いと言えましょう。その冷たい空気に踏み出す船乗りは希で、そうするものはとても用心深く、非常の場合に限られます。なぜならそこに入ったものは固く凍り付くからです。氷結した雨魚の群れ、ザーガズムの一群、飛空船丸ごととのその乗組員が漂っているのが見いだされます。
 炎の空に接している減りの部分のみ、船が想像できないほどの歓喜から生き残る唯一の道です。この経路は細く視界も悪いため、海賊たちが待ち伏せる絶好の場所でもあります。この短剣の刃のような場所でも耐え抜く生命は存在し、植物より動物の方が多いようです。
 氷の翼(Frostwing)は空鮫と同種ですが、大きく、白と灰色の斑皮のマンタ(オニイトマキエイ)のような狩猟動物です。凍える空にひったくって、鳥類や暖かな血を持つほ乳類(言うなれば人間)を食します。雹蜂(Hailbees)は小さなねずみ色が狩った昆虫で、細く先のとがった淡い青色の植物つらら魚(icicle fish)を、内側から喰らい尽くします。ぷっくり鳥(Puffbirds)は小さな丸い鳥で、つらら魚の葉を主食とします。ジード(Xedo)は鋭い嘴を持った、楕円形の体を持つ大きな鳥で、柔軟な翼を持ちます。上部は黒く下部は白い鳥であり、その肉は凍霜の空に慣れた船乗りにはごちそうですが、そのほかの人にとっては脂っこすぎるようです。


炎の空(the Sky of Fire)
 七つの空の中で唯一、炎の空は動きません。世界の中央部に位置し、円錐形の高熱の渦として、蒼からドームのてっぺんまで渦巻いているのです。境界線は熱い空気の壁で波打ってみえ、質の異なる空どちらの側からも視認できます。太陽が地平線上にある間、炎の空に入った物体は数分で炎に包まれます。月が見えている間は、この発火はもっと遅くなり、炎が上がるまでおそらく一時間ほどかかります。太陽と月の両方がみえている間は、協会を横切るものは即座に燃え尽きて灰になります。炎の空を通過できるのは、新月の暗い晩のみです。この「龍の疾走(Dragon’s Sprint)」は、勇敢さから来たものであれ無謀さから来たものであれ、船乗りの間で注目を集めます。
 伝説では、テランレム(Telanrem)と呼ばれる小さな雲島が、炎の空の丁度中央、すなわち世界の中心に位置するそうです。いずれにせよ、コルドゥンの神秘の力が手助けしなければ、一晩でこの空の中央に飛空船で到達することはまず不可能です。
 炎の空、あるいはテランレムには龍(Doragons)が住むとされます。僅かな目撃談によると、蝙蝠の翼を持ち炎をはき出す蜥蜴とされます。船乗りたちの迷信めいた噂だと、龍を目撃すると飛空船に積み込まれている火薬が不安定になり、船が爆発するとされます。火蜥蜴花(Salamander Blooms)は赤い花弁を付けた球状の植物で、内部を蒸気で満たし、空に浮かぶことに用いています。その葉はこの世界でもっとも探し求められる高価な香辛料であり、新月の晩のみ収穫がなされます。流された火蜥蜴花が境界を越えれば、凋み命を無くして、蒼へと落ちていきます。