断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

DitVのコンフリクトを考える

 DitVのコンフリクト解決ルールは面白い反面、看過しがたい問題を抱えています。
 一対一での運用に最適化されているため、複数のPCが関わるコンフリクトでは、バランスが壊れてしまうのです。
 個人的には、PCが暴力に至った時点で、一方的な殺戮になるのは問題ないと思います。その結果は、更に解きほぐし難い状況をPCにもたらしますし、ゲームのテーマに合致しているからです。


 問題は説得などを複数人で行うことにより解決が図られることです。
 説得により事態を収拾することには何の異存もないし、暴力に頼らず収められるならそれにこしたことはありません。困るのは、説得の材料が揃っていないうちから、NPCの行動を妨げる為に集団説得が用いられることです。
 これは沸騰しつつある事態が動的なうねりを見せる前に、物事の道理でではなくルール的に抑え込む行為であり、セッションを面白くすることに貢献しません。大体、4対1の説得が落ち着いて行えるとは思えませんからね。頭に浮かぶのは、集団で一人に総括を求めるとか、そういった吊し上げの構図のみです。
 この問題は1回目のセッションから分かっていたので、セッションごとにハウスルール的な処理を行っていました。しかし、毎回異なる暫定処理を続けるのはプレイヤーに混乱や不満を生みかねませんので、いったん整理を行います。
 以下、現在考えている解決案。


・賭け対象の調整
 「〜を納得させる」などという賭けは一切却下するようにします。
 これまでもGMとして、プロセスを含む賭け(「相手を無傷で制止する」など)や、NPCの意志をねじ曲げる賭けは、プレイヤーに賭け内容の変更を要求してきました。
 しかし、徹底されていたとは言い難く、GMとして甘い基準で賭を成立させたこともありました。
 そういった行為は、その場はよくても、結果的にプレイヤーを混乱させる危険を伴います。
 この辺を一度整理して、明確にします。
 まず、エスカレートによりコンフリクトのエリアが変化する可能性がある以上、「説得」は賭けに含めるのは不適当です。
 基本的なコンフリクトは、自分の目的を達成するためか、相手の行動を妨害するために発生するものです。そして、何が起きたかはコンフリクトの過程により決定されるのです。
 例えば、秘密を抱えているNPCの「口を割らせる」ためのコンフリクトは成立します。相手に共感して懺悔させるのか、糾弾して自白させるのか、拷問を用いて無理矢理引き出すのか、といった過程はコンフリクトを通して描かれることとなるでしょう。
 そして、意志を強要する系統のコンフリクト(腹を立てているNPCに自制を促す、など)は、その場で一時的な同意は引き出せても、強制力はないものとします。PCの手持ちの材料やアプローチ、コンフリクトの過程が適切なら、自発的にPCの意志に従う可能性はあります。しかし、たいていの場合は、若干遅延させるに過ぎません。
 「NPCの信頼を勝ち得る」ことで考えてみましょう。相手の窮状を理解した上での適切な行動は、確かに信頼を育て、NPCを潜在的な味方に変えるかもしれません。けれども、その場限りの言いくるめや、強制的に意志をねじ曲げる手法で得られた信頼には、NPCが従う義務はありません。特に無理強いで得られた結果は、その場でNPCを従わせることはできても、将来に禍根を残すこととなるでしょう。
 このことはプレイヤーに認識してもらった上で、ゲームに臨んでもらいます。


・原則の徹底
 DitVのコンフリクトは「無視できない相手の行動」です。
 逆に言えば、無視できる程度の行動ならレイズに対して受けを行う必要はないという解釈が成り立ちます。
 肉体的な行動ならともかく、言葉によるものはレイズの無効を宣言可能かもしれません。
 コンフリクトは言葉によるものであれ、相手を傷つける可能性が非常に高い行為なのです。相手が聞き捨てできない言説を投げかけ続ければ、実際的な暴力へと至るプロセスを自然な形で再現できるだろうし、ゲームのテーマにも合います。
 問題は、誰が「無視できるか否か」の判断を行うか、です。
 この原則に従うのなら、プレイヤーもGMも、言い繕うことでPC/NPCへのレイズを無効化できてしまいます。コンフリクト・ルール自体が意味を失う危険もあるでしょう。
#参考 http://www.indie-rpgs.com/forum/index.php?topic=25603.0


・フォーカス
 複数の関わるコンフリクトは、一対一コンフリクトに他のキャラクターが関与すると解釈します。
 NPCはラウンドごとに「フォーカス」対象を決定することができます。
 このPCとはお互いに無視できない「レイズ」と「受け」が成立します。
 他のPCとの間は、筋の通った説明ができるなら相互に「レイズ」を無視する(「受け」ずにサイコロを捨てさせる)ことが可能となります。
 上記の原則を用いつつ、柱となる争いは成り立たせるようにするルールです。


・悪霊の影響
 悪霊の影響ダイスは本来、邪術師となったNPCにしか影響を与えません。
 しかし、邪術師を利する状況には、全てこのダイスが用いられるという解釈もなされています。
 なので、邪術師NPCが望む状況に関しては、全てNPCに悪霊の影響ダイスが加算されます。
 単に難易度を上げるだけの解決策なので、有効でしょうが、あんましエレガントとは言えないのが欠点でしょう。


・別ルールを用いる
 同じデザイナーにより、Dogsのルールでホラーものを遊ぼうとする試みがなされていました。
 それに伴い、より多くの状況に対応できるようにルールが改変されています。
 Afraid: Resolutionのコンフリクト解決は、なかなかスマートにみえます。
 NPCが受けに使うダイスは、そのラウンドの間残り続け、全てのPCの行動に対して有効となるとされます。より高いレイズが行われた場合は、ダイスを加えて対抗します。
 NPC単体が強くなりすぎる気もしますが、エスカレート時の切り返しも含め、非常に興味深い代物です。
 Dogsの世界観に合うかと言えば微妙なのですが、DitVのルールで別設定のセッションを行うときはこの解決策がよいかもしれません。