断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

ネバーウェア

 知る人ぞ知るアメコミの傑作『サンドマン』の原作者、ニール・ゲイマンによるファンタジー小説。現代ロンドンの地下に、もう一つのロンドンが存在し、忘れ去られた過去の欠片、民間伝承やおとぎ話の登場人物、都市伝説などが混在しているという設定の物語です。
 元々はBBCのミニシリーズTVドラマの脚本として書いたものを、放送後に小説化したものとのこと。ドラマ版のDVDも日本で発売(レンタル)されていますが、こちらは今ひとつ。子供向けで作っているのかもしれないけど、全体に漂ういかんともしがたいチープさと大仰な演技が今ひとつ乗れません。1996年の作品なので古くさいのは覚悟していたけど・・・。


 物語はというと、大人になりきれない証券マン、リチャード・メイヒューが怪我をしたホームレス風の少女を助けたことにより、下なるロンドンへと転落して冒険に巻き込まれるというもの。「不思議の国のアリス」を意識しつつ、血と残酷さが散りばめられております。しかし、大人向けファンタジーにありがちな性的要素は隠喩も含めて少なめです。多様な歴史や物語に関わる小ネタの使い方はさすがの一言。登場人物の中ではカラバス侯爵(「長靴をはいた猫」に登場するトロルと同名)の魅力がずば抜けています。こういう心をわしづかみにするような格好のいいNPCを演出できるGMになりたいな。


 同作者の小説を読むのは『スターダスト』に続いて二作目なんですが、『ネバーウェア』の方がずっと読みやすくて入門者向けという気がします。ネタのマニアックさ、散見される悪質さが面白い作家だけに、読み手を選ぶのかもしれません。アマゾンの評価でも酷評が少なくないですしね。さて、次はヒューゴ賞/ネビュラ賞の受賞作『アメリカン・ゴッズ』に手を出しますか。しっかし、高いな・・・。
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090419/bks0904190846008-n1.htm