断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

ヒーローポイントあれこれ

 プレイヤーがセッションの状況に介入できるヒーローポイント的な要素は、かなり多くのシステムに取り入れられています。
 事故防止程度のものから、特定の判定を有利にするもの、判定を必ず成功させるもの、状況を一変させうるものなど、その内容は様々です。これを把握しておくことはシステムの目指す方向性を捉える上でも有用です。
 持たないシステムは、世界観的な理由や別途に事故防止が組み込まれているケースほとんどです。例えばクトゥルフ神話RPGにおいて、PCは対峙する名状しがたき存在に無力な探索者であり、ヒロイックな活躍で世界を救うことはまず起きません(結果的にそうなる可能性は僅かにあっても)。ソード・ワールド2.0の場合は危険と隣り合わせの世界で活躍する冒険者を再現するためか、HPをどんどん増やすことにより不慮の事故死はおきにくくしてあります。
 分類してみると面白そうだけど、今回は手抜きなのでやりません。


 さて、国産RPGにおけるヒーローポイントは、比較的派手だったり確実に決定打をもたらすものが多い傾向にあると見ています。
 例えば、自分がゲームマスターをする機会も多い『深淵』なんかはかなり極端です。プレイヤーはキャラクターの寿命を削る事によって、消耗した分だけ判定の達成値を上げることが可能だったりします。また、寿命を削る事によって大失敗することも可能なので、はっきり言ってしまえばプレイヤーは判定に成功することも失敗することも思い通りです。また、カードで達成値を上げたり、戦闘において一撃必殺を演出したりも出来るので、寿命と合わせれば深淵のPCは恐ろしいまでの瞬発力を持っています。
 一度は、PCたちを(さらに追い詰めるために)撤退させるつもりで、範囲攻撃持ちの強めの魔族と本気で戦わせてみたところ、逆に魔族の持つ魔剣が叩き折られて退却を余儀なくされるということが起きました(PCたちも全滅しかけたけど)。そうやって紡ぎ出される(ゲームマスターだけのものでも特定のPCだけのものでもない)物語を生み出す可能性こそが深淵の魅力なのです。翻って言えば、プレイヤーのストーリーへの介入が自在であるからこそ、雰囲気やイメージを調整しておかないと拡散してしまう危険があります。また、これが原因で複雑な話を展開するには今一つ向いていないという側面もあるのですが、それはまた別の話なので割愛。
 カードを貯めたり、ポイントを集めたり、神業を使ったり、システムからもたらされる方法は色々ありますが、こういった派手なヒーローポイントを採用したシステムは、セッション全体がある一点(たとえば最終戦闘)のために積み重ねられる場合が多い印象を持っています。きちんと目的にあったシステムを選択すれば、大きな力を発揮することでしょう。


 近頃よく使う海外のRPGシステム(世界設定は独自性が強く大抵はハード)は、それよりはずっと控えめなヒーローポイントを提供します。例えばシャドウランのエッジは、ダイスの増強と6の目が出た場合の振り足しという一見派手な効果をもたらしますが、確実性はさほど高くありません。むしろ、ミッションのためにコネを駆使して状況を把握し、吟味した上できっちりとした作戦を立て、かつ変化する戦局に臨機応変な対応を行っていくことこそが、確実な成功への道です。ヴァンパイア:ザ・レクイエムにしても、意志力を消費すれば振れるダイスが3つ増えますが、これで得られる成功数の期待値は1に満たないのが現実です。これらのシステムは特定の物語の再現には今一つ向いていないでしょう。
 それでも、ハードな状況をなんとか乗り切ろうとしてプレイヤーは知恵を絞りますし、そうやって積み重ねられた最後の一歩をヒーローポイントが補佐して成し遂げることは起こりえます。確実性が無く、リスクが大きいからこそ、より劇的な展開が発生したりもするのです。だからこそ、ヒーローポイントを使う一発逆転の要素をもったロールも盛り上がるのでしょう。


 だからどれが優れているとは言えません。肝心なのは適所適材です。
 現在の自分は後者のシステムに傾倒気味ですが、それを使って得た収穫や方法論を今度は前者のシステムを使う際に反映できればと望んでいます。