断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

文字情報と演出

 先週土曜の朝ダベリ時に、今年の共通シナリオ(SW2.0)で指揮を執っている3回生Mさんとお話ししました。
 覚え書きの通り、セッションはオープニングのみで中断と相成ったわけですが、問題点のほとんどはすぐに修正可能な些細なものでした。むしろ新人さんロールプレイなどという、舐めたプレイスタイルを敢行した自分の方が犯罪的という有様。反省してます、はい。


 ただ一つ気にかかったのは、NPCとの関係演出です。
 シナリオによる設定で、PCたちには一人の女性NPCが冒険者仲間として同行しております。別にヒロイン的立場ではないのですが、少なくとも彼女への関心が希薄すぎると、セッションの肝(オープニングの最後で判明)が生きない可能性があるという構造でした。
 にもかかわらず、プレイヤーに手渡されているのは、中心的なPCたちの「幼馴染みの仲良し」であり「彼女は幼少期に悲惨なめにあった」という文字による情報のみ。
 オープニングでは、過去のトラウマから怯え、自責の念をこぼす演出が行われましたが、新人さんを演じていた自分目線には「気にかける相手」ではなく、「うざったいNPC」程度の認識しか残りませんでした。


 これが平時の例会なら、無理にでもプレイヤーが絡んで盛り上げてくれることを期待できるでしょう。
 しかし、迫り来るは新歓期。
 誤解を恐れずぶっちゃけると、お約束を知らないお客様相手に、一ヶ月の接待を行う期間なのです。
 現行メンバーも各卓に分散するでしょうから、援護射撃も期待薄です。


 だからこそ、不断では無粋とみなされかねない手段を用いてでも、新人さんの耳目を惹きつけ、セッションに引き込む工夫が欠かせないと思うわけです。
 幸い、このシナリオの肝となるネタは十分な破壊力があると認識しました。
 にもかかわらずそこへ繋がるNPCへの引きがささやかすぎるのです。


 ダベリタイムでは単刀直入に「なんで新人さんPCに個別オープニングを行って、NPCに関わる過去の事件を演出しないの?」と尋ねました。「オープニングで彼女が蛮族に怯えるシーンを入れるから、二度手間になりませんか?」との回答。
 新2回生のマスタリングがまだ不安定なので、最初の大ネタまでテンポよく進行させて、一気に引き込もうという計画だったようです。先週のテストプレイ段階では、両GM共に行き着くまでにサービスしすぎて蹴躓いていたから、先を見越したいい判断だといえます。


 不思議だったのは、肝心のイベントを効果的に演出するために欠くべかざる、NPCとの関係性をさほど気にも留めていない様子だったことです。新人さんプレイヤーに直接的な働きかけを行うことで得られる効果よりも、そこに時間をつぎ込んでしまうリスクに意識が向かっている様子。
 しばらく隔靴掻痒の話を続けた後に見えてきたのは、僕の提案した演出的な働きかけは、設定+NPCが怯えるシーンに包括されるとMさんがみなしていることでした。
 つまり、文字情報と先のちょっとした演出を行えば、プレイヤーの脳には個別の積極的演出が像を結ぶはずだ、と。
 ここまでの齟齬は、想定キャラクターが既に頭に入っている共通シナリオGMと、そういった分野に疎かった僕との、認知の違いから生じていたわけです。ここでようやく得心。
 「僕みたいに、想定されるキャラクターに接触したことのない新人さんプレイヤーはいるだろうから、積極的演出は意識しといた方がええよ」というあたりでまとまりました。
 あとは、演出してプレイヤーに体感させることが、ハンドアウトに記された情報のみに比べると、いかに有用かを寝ぼけ頭でくどくど。繰り言になっていたかもしれず、申し訳ない。


 書き出したついでに、自分が何故これほどに演出の力に重きを置いているのか省みてみると、マイナーなシステムをGMする機会が多かったことがあげられるのではないかと。
 奇抜な世界観などを時間をかけて説明するのは、GMにとっては手間だし、プレイヤーにとっては文字情報の咀嚼に飽和してしまうという、双方にとってしんどい作業となりがちです。
 メインシステムとして深淵やVampireなどを用いてきた身としては、なおのことこの負担が骨身にしみています。回数を重ねれば説明はこなれてくるのですが、新人さんの注意を引き止めるのは不可能に近い難事です。


 それよりは5分程度の簡略化した概略で説明を済ませ、本編で積極的にねちっこい演出を行う方が、対話が発生する分まだ集中力が持続します。情報はPC視点で与えるため、よりキャラクターに入り込みやすくなるという利点も見逃せません。
 プレイヤーが文字情報で得る世界の俯瞰図ではなく、PCの認識に限られるため、誤解が生じることも少なくありません。現役時代は、その辺に神経をとがらせて注意を払っていましたが、最近は気にかけなくなりました。むしろ、そのかみあわなさを歓迎する気持ちするあります。
 なぜなら誤認に基づいた行動に対して、世界の条理に沿ったなりゆきを返す双方向的なやりとりが、プレイヤーの没頭と世界への理解をより深める結果を生むことが多いからです。ズレに起因する行動は事故を起こしやすく、それがセッションに思わぬ方向性を与えてくれることも見逃せません。
 最後まで誤解したままなら、終了後に解説してあげれば問題ありません。
 むしろ、放置して謎を残した方が、印象的なセッションとして記憶に残るので、新人さんに対しては効果的かもしれませんね。


 気にかかっていたのでだらだら書き連ねてしまいましたが、今ひとつ焦点が定まりませんのう。