断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

10/23の覚え書き(2)

 冷え込み激しく絶賛風邪悪化中。

2部

 1回生MさんGMによるソードワールド2.0。
 サークルに入る前はRPGを遊んだことのない新人さんで、今回が二回目のGMとなります。
 公式設定にもあるルキスラ帝国を舞台として、PCたちは帝国軍に所属しているという設定。帝国の飛行艇研究所から逃走した100匹のタビットを捕まえる話、というシナリオ紹介でした。
 PCはLv5〜6あたりで、データは作成済み。
 現役の何人かに相談して、シナリオ作成、データ調整を行ったということで、状況設定をA4用紙1枚に書き出すという気合いの入りようでした。


 キャラクター作成時に持ち上がったのは「PCの立場」をどうするか、ということでした。
 PCたちは砂漠(公式設定によると相当ヤバイ地域)に特務を受けて派遣された小隊とされていたのですが、部下もなく半年そこで過ごした理由が今ひとつ不明確。GMも「特務隊」にするか「懲罰隊」にするかで迷っている様子でした。
 プレイヤー面子は現役、OB、OB、OB。
 「この顔ぶれだったら、懲罰隊はやめた方がいい。ろくでなしPCの集まりになる。」という冷静なアドバイスもありました。けれどもGMは「懲罰隊の方がお金に釣られてくれるだろうし、やりやすいかなあ」と、PCの立場を「1年の懲罰任務で砂漠に送られた小隊」と決定。
 そればかりでなく「以前、皇帝陛下が砂漠に自軍を見舞った際、落としたカフスボタン1つを探す」任務を与えられたという設定のおまけ付き。補給は3週間に一度で最低限。その時に作業しているかチェックも施されるとの、過酷な懲罰実態が明らかとされました。
#これらはGM側からの設定です


 そんなんですから、できあがったPCは揃いも揃ってあくが強い連中ばかり。

PC1:ソーサラー&コンジャラー。エルフであり、長きにわたって書類偽造で軍の金を、3割は仲間に還元7割は懐に入れていたため懲罰部隊に。口癖は「俺は100万ガメルをため込んでいる」だが、確認したものはいない。なので二つ名は“ほらふき”。
PC2:フェアリーテイマー&セージ。帝国上層の女性貴族に護衛として仕えていたが、その愛人である騎士とできてしまい、懲罰部隊に送り込まれてしまったボディガードの女性。貴族女を恨み、愛人には未だに未練と幻想を抱いている。
PC3:グラップラー&セージ。興行主の不興を買い、闘技場で噛ませ犬人生を余儀なくされた拳闘士。趣味で闘技場に乗り込んできた青年貴族との(負けるべき)試合で鬱憤を爆発させ、華美な顔をふためと見られぬ有様に破壊。懲罰部隊に送られるも、その試合以来どこかたがが外れている。
PC4:ファイター&プリースト。パンを盗み公衆の面前で罰を受けようとしていた、浮浪少年を庇い、その罪を引き受けて懲罰部隊に。なお、本人は当日泥酔しており、自らの高潔な行いを覚えていないらしい。SW2.0設定のドワーフなので、砂漠の暑さはたいして応えないとか。


 プレイヤーたちはノリノリで荒くれキャラを演じます。
 例えば、セッション開始時に皇帝のカフスボタンを探すという懲罰任務を聞き、「あの小さなボタン1つを探して、もう11人が砂漠から帰らねえ。今日の奴を入れると12人目だな」「そりゃいい。ボタンが見つかったら、11人を殺した英雄として勲章をやらなきゃな」とか。
 開始直後の軽口で、「こんなすくねー水じゃ、次の補給までに干物になっちまう。砂漠で暮らしているあの部族(人間)から水を奪おうぜ」「悪くねえ、あっこには女もいるしな」「ちょっと待て、奪うために襲撃をかけるんじゃない。奴らがボタンを持つ疑いが濃厚になったから、とあとで報告するんだ」とか。
 全般にそんなノリ。


 ・・・予想通りと申しますか、倫理観というものが皆無のPCどもであります。


 本編は、砂漠で文字通り砂を噛む生活をおくっていたPCたちの元に、道に迷って渇き死に寸前のタビットが現れるところから始まります。なんでも、飛行艇建造プロジェクトのため帝都に向かう途中だが、もらった地図がいいかげんで途方に暮れたとか。
 いろいろせびりとりつつ、命を繋ぐ程度には水を与えたPCたち。数日後、補給隊と共に彼は帝都へと旅立っていきます。


 この展開だと、タビットの口添えで懲罰が短くなる、とか予想するじゃないですか。
 ところが、待てど暮らせど、救いの手はこねー。
 次のシーンは3ヶ月後に、蒼鷲騎士団の団長を務める皇帝の妹が、副長の騎士と共に「バルバロスのあぎと」で行方不明になったという知らせが届くところ。
 その次のシーンは更に3ヶ月近く経った日。
 最初の時点で、砂漠に送られて半年は経過していたため、1年近くを地獄で過ごしたこととなります。
 結局、タビットの嘆願で短くなった刑期は一週間でありました。無論、感謝の気持ちを見いだすのは、砂漠でオアシスを探し出すのと同等の困難事です。


 そんなわけで、帝都に帰還したPCたちを待っていたのは、タビット100匹が大量脱走したという騒ぎ。
 宮廷の門前を埋め尽くすぐらいの人手が集められ、「無事に連れ帰った1匹につき、1万ガメルの報酬が与えられる」と宣言されます。
 PCたちも同行するのかと思いきやさにあらず。素行の悪い彼らは、予想される逃走経路に身を置くことは許されず、危地であるバルバロスのあぎと周辺をだらだら調べろとの隊長命令が下ります。一儲けのチャンスどころか、命の危険すら伴うあてのない任務に身を投じる立場になったPCたちはテンションだだ下がりです。
 そして、砂漠で出会ったタビットから手紙を預かっていることが告げられます。その中に機密書類が混在していたことから、何故かPCたちが研究室に返しに行くことになります。しかも、隊長が同行。
 怪しいことこの上ありません。


 そして飛行船研究所で人目の離れた隙に、隊長がPCの知人タビットの部屋をこじ開けるよう、こっそりPCに命じます。部屋に入ると、彼は証拠を探すように命令。もちろん、このやくざPCどもが素直に従うわけもありません。
 「隊長、何を意図しておられるのか、腹割ってくださいよ。でなきゃ、ここで大きなもの音を立てますぜ。所員が駆けつけて、何故隊長がここにいるのか、問題になるでしょうな」と、恐喝。
 観念した隊長は、知人タビットこそが脱走の首謀者らしいと白状。他のタビットも彼に従って逃げているはずだから、その行方を追えば100匹全てを捕まえることができるだろうと。その証拠を探すために、研究室の知人タビット部屋に入り込んだと言うではありませんか。
 理由はシンプルで、「ワシも100万ガメルが欲しい」・・・うむ、大いに納得!
 ちなみにこの懲罰部隊隊長氏、延べ15代もの皇帝に仕えたドワーフで、現在も皇族と懇意にしているとの設定だったはずです。


 この時点でGMが洩らしていたのですが、元々は研究室に調査のため派遣され、そこで儲け話を嗅ぎつけるという展開を予定していたそうです。ところが緊張から順番を逆にしてしまい、本来は命令を与えるだけのちょい役だった隊長が、欲望に正直極まりない人物に出世させざる得なかったとか。
 もっともプレイヤーどもは、「ああ、15代の皇帝に仕えてきて、現在の役職が懲罰部隊の隊長じゃ、そりゃ腐るよな」「役職は大佐だけど、年月や功績を考慮すれば友人は皆将官クラスだろうしね。『せめて准将に・・・』とかこぼしているのが目に浮かぶ」などと、さんざんな言いぐさで得心しておりましたが。


 金銭への欲望でがっちりスクラムを組んだPC及び隊長の5名は、研究所に残されていた手書き地図を発見。どうやら、バルバロスのあぎとの地下洞窟を抜けて、遺跡地帯へと向かう計画だった模様です。
 早速“ほらふき”の助言に従い軍馬を借りる(申請には1頭と書き、厩舎では10と書き換える詐欺によって)と、一路バルバロスのあぎとを目指して駆け出します。途中の帝国歩哨の砦はがんスルー。というか、避けて移動する徹底ぶりでした。
 無事、見とがめられることなく現地到着。タビットの痕跡を探していたところ、彼らが廃棄した枯れた魔香草をいくつか発見。幾多もの小さな靴跡も見つけます。
 と、そこでレンジャーっぽい男から呼び止められます。
 彼が言うには、洞穴には精神に寄生する過去の怨霊が幾匹も住み着いているのだとか。取り憑かれると、精神が退行して幼児のようになり、物理的に気絶させるまで戻れないとの話。更に話そうとしているところで、目的を尋ねられ、一人がついうっかり「100万ガメル」という言葉を口走ってしまいます。いや、明らかにわざ隙を見せているんですが(笑)。
 失言を聞きとがめたレンジャーが更に尋ねたところで、噛ませ犬拳闘士プレイヤーが「『内々の話なんだが、実はな・・・』と声を潜めて言いながらに、肩を寄せるように近づけますか?」と質問。OKが出た次の瞬間、「じゃあ、不意打ちで頭部に一撃を加え、そのまま殴り殺します」と続けて宣言。失言したPCも同時に呪文攻撃を行う周到ぶり。一般人だったので、判定もなく即死となります。あ、拳闘士やってたのは僕です。


 事が終わったあと、さすがに他の2PCからは注意が飛びます。
 「お前ら、早すぎ(笑)」「そうですよ、なんで殺しちゃうんですか? 気絶させてこの辺に捨てておけば、蛮族が始末してくれたでしょうに。そうすれば手を汚さずにすんだのですよ」「もっと酷いわー!」
 あ、あれ。別に非難されてないや。
 SW2.0のPCとして倫理的に守るべき一線を軽く乗り越えたにも関わらず、がっちりとした信頼が根付いています。こいつらホントにろくでもねー、とこの時に確信いたしました。


 死体を処分後、バルバロスのあぎと地下に潜入。
 蛮族こそあらわれなかったものの、神官戦士PCが2度にわたり憑依され幼児退行(ダイス目で取り憑くPCを決めた結果)。そのたびにぼこられる憂き目に遭いましたが、特に危機感は覚えませんでした。NPCを殺したためもらい損ねた情報も、状況から予想できる範囲内だったのが幸いしました。
 プレイヤーの中にはセッション後、「あれだけの行いをしたPCたちだから、情報を得られなかったことによる過酷なペナルティを与えてもプレイヤーは文句を言わないよ」と助言する方もおられましたが、至極同意。


 さて、洞窟を抜けると、そこは草木の生い茂る遺跡地帯だった。
 歩を進めると、PCたちの知人タビットが、若い女性に耳をつかまれ遊ばれています。
 そう、これこそ行方知れずになっていた皇妹殿下。どうやら洞穴の亡霊に入り込まれた様子で、すっかり子供に返っています。
 彼女と顔見知りの隊長に対処を任せ、更に進んだところ、戯れる99匹のタビットと、応対に追われる騎士団副団長の姿が。事情を伺ったところ、ようやく事の顛末が明らかになります。
 三ヶ月前、行方不明になったすぐあとに、彼らは洞窟を抜けて遺跡地帯に脱出。したものの、皇帝の妹殿下が幼児化してしまい、皇帝の心情をおもんばかるに帰還もできない状況になってしまったそうです。副長は少し前に帝都へと一人密かに帰り、信頼できる騎士団仲間や協力者に、彼女を元に戻す方法を探して欲しいと依頼。ついでに、以前から親交のあったPCたちの知人タビットに、彼女を慰めるために遺跡地帯に来て欲しいと頼んだのです。知人タビットは一人抜け出すつもりでしたが、研究所のありように不満を抱いていた仲間たちが勝手に同行。こうして大量脱走騒動とあいなったわけです。


 矛盾が多く(特に副長の行動に一貫性が皆無で、かつ帝都に戻る一週間の間、幼児化した彼女を放置していることなど)、いくつかの点でプレイヤーからツッコミが入ってましたが、二回目に作ったシナリオにしてはなかなか凝った真相です。アドリブ設定の生々しさとか、見るべき点の多いセッションでした。
 このあとは、シナリオの都合上、ラストの戦闘を行いたいGM(仕掛けを準備していたらしい)と、もはや100万ガメルも手に入ったんだし、出来る限りことを穏便に済ませたいプレイヤーとの間での綱引き。あわや戦闘となりかけながら、PCたちが副長の利益第一に考えた説得を行ったり、素早く戦線を離脱したりを繰り返し、結果的に二人を帝都に連れ帰ることが叶いました。
 そして、PCたちはみな分け前を受け取り、懲罰部隊から解放。
 やったよ、やりとげたよ!


 ・・・やりすぎました、ごめんなさい。
 無茶苦茶楽しかったけど、悪のりしすぎました。
 サークルのベテランどもに悪人をさせると、一片のモラルも有さないからダメだね!