危うさと信頼
RPGにおいて、参加者がガードを下げる、という話絡みで少し。
端的に言えば、これは参加者間にある配慮の敷居を引き下げるということです。
TRPGはコミュニケーションの上に成り立つ遊びですから、相互の思いやりは大切です。しかし、行き届きすぎた配慮が、かえって楽しみの幅を狭めてしまうことも起こりえます。
GMの準備したシナリオを汲み取ろうと、静かにそのリードに従うだけでは、セッションは盛り上がりに欠けてしまうでしょう。
また、現実同様に危険な状況、あるいは問題ある人間関係を回避し続けるような、リスクから遠ざかることをよしとするスタイルは面白味に欠けます。GMもPCも、選択の幅を大きく狭めることと同義だからです。
個人的な経験からしても、双方が物理的感情的に危険を冒したセッションの方が、大いに面白いと思います。
当たり前ですが、これは参加者のコンセンサスを得ないプレイヤーの暴走や、GMによるハラスメントまがいのセッティングを奨励するものではありません。
安全さをかなぐり捨てたプレイ・スタイルにとって最も重要なのは、その適切な距離感なのです。
これを成り立たせるために必要なのは、参加者同士の信頼です。
僕個人は閉じたサークルに身を置いているため、参加者間の信頼とリスクへの踏み込みに関しては、ほとんどの人が自然と了解してくれているように感じています。
プレイヤーとしては暴れるのが好きだし、GMとしてはゴアな描写を何気なく挟むことが少なくないため、ありがたい限りです。感謝感謝。いや、ちゃんとTPOを辨えているってば!
信頼は一朝一夕に生まれるものではありません。
とはいえ、サークルのスタイルから考えるに、信頼を支える配慮はシンプルなものです。踏まえておけば、案外コンベンションなどでも応用できる気がします。
ざっと考えると、だいたい次の3点に集約されるのではないかと思います。
1.導入はGMに協力する
導入部において、プレイヤーは積極的にGMへの協力を行います。
PCがバラバラなどの状況で、GMが邂逅の演出に困っているようなら、プレイヤーの側から仕掛けていってもよいでしょう。
「依頼を受けない」などの衝突は、よっぽどのことが無い限り回避してください。(それがGMの提示する選択であった場合は、また別ですが)
セッションを円滑に開始することで、GM負担を軽減できるはずです。
2.特定の行動を強要しない
置かれたシチュエーションに関して、(主にGMがプレイヤーに対して)行動を強制してはなりません。
困惑して行動を起こせないでいるプレイヤーを促ことも時には必要ですが、最終的な選択権を奪わないでください。
また、知識が参加者に共有されていない環境で、お約束を行わせるなども同様です。
3.PC間での中途排除は避ける
セッションにおいてPC同士が争い合うのは自由ですが、結果として途中でプレイから参加者がはじき出されることは、極力避けるべきでしょう。
GMとのやりとりによる排除ならともかく、プレイヤーが他のプレイヤーのゲーム参加権を中途で侵害するのはやり過ぎです。
決定的な行動に出るのは、セッションの集約点まで待ってください。
もちろん、PC間で争い合うのが前提のシナリオ(うちではマルチ・シナリオと呼称される)なら別です。
#PC同士の争いは長引きやすく、セッションをぐだつかせる元凶となりかねないため、やるなら一回ですぱっと決着がつく形を取るのが望ましいという意図も含まれています。