断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

横暴なGMにならないために

 言うまでもないことですが、RPGのセッションにおけるゲームマスターの権限は、広く強力です。
 ルール裁定の最終決定権を持つばかりではありません。シナリオ作成、イベント進行、周辺環境、相手のデータ、NPCの反応など、セッションの多岐にわたって意図通りに操作できます。その場の思いつきを投入することも容易です。
 もちろん、無制限ではありません。
 その特権は、楽しいセッションを作り上げるという目的においてのみ、正当化されると言っていいでしょう。

GMの計画

 この決まり事をあっさり乗り越える大きな原因となるのが、シナリオに合わせて状況を操作しようとするGMの行動だと思います。
 具体例を挙げるなら「ラスト・シーンで人質にする予定のNPCをPCが徹底警護。判定もひたすら成功して隙がない。」「PCを遺跡の奥深くに追い込むことで、状況を逆転する鍵へと至らせるつもりなのに、彼らは小道に立て籠もっての徹底抗戦を主張。」などを打破するために、強権発動してしまうことを指します。
 「シーン切り替えなどで強引に事態を発生させる」「PCたちが抵抗不能な物量の敵を展開する」などが取られる対策となるでしょう。


 GM視点からは、将来の楽しみのためであるから、正当化されると考えるかもしれません。
 しかし、プレイヤーはシナリオの全貌なぞ知るよしがありません。
 下手をすると、自分たちの意志が踏みにじられたと感じたり、明け透けなGMの意図に醒めてしまったりする可能性があります。
 「半ばぶっちゃけてお願いする」も最後の手段としてはありかもしれませんが、プレイヤーがそれでしらけてしまう危険があるため、避けるべき下策だと思われます。


 GMの考えた通りの段取りで進むセッションのみが、プレイヤーを楽しませるわけではありません。
 常にプレイヤーの視点を忘れてはならないのです。


 もちろん、プレイヤーはセッションを成功させるためGMに協力すべきです。
 けれども、それはGMの意志に従ってPCを動かすことと同意ではありません。
 たとえPCハンドアウトに指針が書かれていようと、GMとは別の解釈をするなどの理由付けがあれば、従わない権利がプレイヤーにはあると僕は考えています。
 セッションを壊す悪意がプレイヤーにある場合を除き、GMは「セッションに協力しない」「ハンドアウトに従わない」などの批判をプレイヤーに浴びせるべきではありません。
 GMの権限はゲーム内の出来事全般に及びますが、唯一の例外となるのがPCの意志(とそこから起こる行動)です。
 これをGMが制御しようとするならば、もはやRPGで遊ぶ意味はないでしょう。


 えらそうに書いておりますが、自分もたまにこの手のミスを、無意識のうちにやらかしてしまうことがあります。
 なので、上記内容は自戒とする向きが強いといえます。


 そうならないためのマスタリングとして、ぱっと次の3つが思い浮かびます。

  • プレイヤーが納得する形でシナリオ通りに進行させる
  • シナリオを即興で書き換えて対応する
  • 計画を心に持たないタイプのシナリオを打つ

 1番目は、準備の積み重ねやアドリブで、プレイヤーが得心する形を作り出し、計画通りにセッションを進めることです。最も無難な手法と言えます。
 2番目は、その時点でプレイヤーの興味や方向性に合わせて、シナリオの展開や真相を書き換えてセッションを展開する方法です。本人の資質が合致するなら、これもアリだと思います。
 そして3番目のGMが計画を持たないタイプのシナリオについては、次回にでも詳しく書く予定です。