断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Poison'dのメカニズム

 昨日、読み直して、やはりいろいろ問題があるなと実感しました。舞台とか題材よりも、主にシステム部分の曖昧さが。


・最初の状況
 王命を受けた暗殺者によって、船長が毒殺されてしまったところからセッションは始まる。


・PC
 18世紀初頭の海賊。たいていは最初からいくつかの罪に手を染め(0でもよい)、最低一つは苦痛を被り、野心を持っている。「犯した罪」「被った苦痛」「野心」は選択式であり、かなり強烈なものが多い。この選択を終えれば、「悪意(Devil)」「心魂(Soul)」「獣性(Brutality)」「野心(Ambition)」の数値が、それぞれ2〜6の範囲で決定される。加えて最大の数値と同じ値の「Brinksmanship」を持つ。瀬戸際外交などを意味し、戦闘の際に用いる。
 ここから装備品を考え、戦闘時の装備状況を示す「Profile」を決定する(1〜4になる)。さらにPC間で一つずつ約束(Bargain)を決める。これもリストから選択式であり、PC同士で貸し借りや約束がなされたことになる。場合によってはGMからPCがNPCになした約束が与えられるかもしれない。最後に被った苦痛の中から、船長によってなされたものを数え上げ、同数のX印をキャラクターシートに記載する。
 同様のリストから選択によって、船と乗組員の特徴も決定される。


・判定
 このRPGにおけるGMとプレイヤーの役割は、一般的なそれに近い。プレイヤーはPCの行動を宣言し、GMは状況描写と処理を行う。プレイヤーは、自分のPCの心情やロールプレイ以外の、事の成り行きについて勝手に描写することはできない。
 PCの実際的な行動は4タイプ+戦闘に限られる。戦闘以外は「苦痛や疲労などに耐える(心魂vs悪意)」「危険やリスクに立ち向かう(悪意vs野心)」「隠密行動や騙しを行う(野心vs獣性)」「無力な相手を害する(獣性vs心魂)」の4つ。判定は前者の能力と同数の六面体をプレイヤーが振り、後者と同数をGMが振る。4以上で成功となるが、GM側は成功を1個差し引く。成功数を比較し、プレイヤー側が上回っていれば行動は成功となり、上回った分のX印をキャラクターシートに記載する。同数かGMが上回っているなら行動はうまくいかず(失敗か、成功しても不利益が発生)、状況次第では戦闘に移行する。過去の出来事をフラッシュバックさせる時にも、この判定を用いる(そしてX印が得られる)。
 戦闘は、双方のProfileを比較するところから始まる。差が4以上なら、ダイスを振るまでもなく高い側の一方的な虐殺となる。PC同士なら、差分だけ高い側のPCにX印が与えられる。双方Brinksmanship分のダイスを振って、成功数を比較すること。PCとNPCの場合、PCの側が高いなら6から差分を差し引き、NPCの側が高いなら6に差分を加える。この値とPCのBrinksmanshipで振り合って、成功数を比較する。同点なら、最も低い目を出したダイスのみを双方振り直して成功数に加え、決着をつける。
 負けている場合、状況をエスカレートさせるか、負けるか、X印を使う(後述)か、を選択できる。エスカレート(武器や状況によって結果表が存在する)は3段階まであり、徐々に負けた側が被るダメージが大きくなっていく(装備がなんであれ、3段階目の敗北は死と同義)。エスカレートさせると、失敗したダイスを全て振り直して、成功数を増やすことができる。結果同数になった場合は、エスカレートさせた側が勝っている扱いとなる。エスカレートさせず敗北を選べば、負傷は最小限で済む。戦闘で勝利した側は、最終的な成功数の差分だけX印を得る。


・X印
 X印は、幾通りかの使い道がある。戦闘前ならX印を3費やすことで、目の前のNPC一人か、手の届く範囲にいるNPCを全員殺す(or無力化)できる。戦闘中なら、費やしたX印分のダイスを追加で振り足す、船長以外のNPCを無力化or殺害する、相手に現在のエスカレート段階に相当する傷を与える、という使い方が可能。戦闘後は、自らが受けた負傷を軽減、相手に与える負傷を軽減、が選べる。ただし、銃器での戦闘では行えないオプションがある。また、PC同士だと、自分もX印を使って、相手のX印消費行動を打ち消すことができる。
 船同士の戦闘や船員を率いての戦闘も、用いる表とダイス数への修正処理が若干違うだけで、判定は同じものとなる。
 戦闘後は全てのX印が失われ、勝者が差分のX印を得るのみとなる。


・約束
 約束を行うと、その対象に心魂を預けることとなる。約束が果たされるまでであれば、一度だけ、預けられた相手は約束を行ったPCの行動にペナルティを与えることができる。この妨害を行えば、その約束事は無効となる。それ以外では、約束が果たされるまで、約束は残り続ける。
 セッション中に、言質をとって、約束事に書き加えることができる。

例1:
PC-A「殺されたくなかったら、余暇を全部よこせ」
PC-B「くそくらえだ!」
PC-Bのプレイヤーはキャラクターシートに「PC-Aは自分を殺すと誓った」と書き込む
例2:
PC-A「殺されたくなかったら、余暇を全部よこせ」
PC-B「余暇を全部渡すので、命ばかりはお助けを」
PC-Bのプレイヤーはキャラクターシートに「PC-Aは自分を殺さないと誓った」と書き込む。

 直接殺すよりも、約束を取り付けて、実質的に無力化させる方が有用なこともあるだろう。


・その他
 船における物事を決定するために、「投票」が行われることがある。PC以外の海賊は追従する扱いなので、実質PC間での投票で決定する。船長が存命で、命令に不満が蓄積されたりしていない限りは、船長の命令で物事は決定される。
 海賊船は補給などのために、商船を襲ってPrizeを得ることができる。船長はこれを用いて、船の修復や補給、PCたちへの「余暇」の分配、自分のX印の増加を行う。
 「余暇」を費やすことで、PCは「野心」の達成に近づく機会を得ることができる。
 これらの処理は全て「約束」を取り付けるいい機会になるだろう。
 なお、GMは機会を見て「過酷な運命」と呼ばれる困難な状況をPCたちに課すことができる。カード化して可視的にすることが好ましいとされる。


・問題点
 一回目に流し読みしたときにも感じたのですが、実は何を軸にゲームを進めていくのかが明記されておりません。
 たぶん、各々の「野心」を原動力に、他のPCと「約束」を梃子にした駆け引きを行い、差し迫った危機を乗り越え野心に近づくためにX印を集める(=海賊らしい残虐行為が頻発する)、そんなセッションになると思われます。かなりマルチ・ゲーム寄りと言えるかもしれません。そうやって決着がつく頃には、海賊ものらしいストーリーが形成される塩梅なのでしょう。
 けれども、PCの行動機会、互いを害する場合の処理、約束の取り付け基準、が曖昧なままGMの手に放置されております。これらは、少し匙加減をいじるだけで、片方のPCを圧倒的に有利な立場に置く項目です。特に約束事は、ハメに近い使い方が想像できるため、プレイヤー間でも配慮が必要になるかもしれません。
 マルチ・ゲーム的な皮を被りながら、芯はストーリー・ゲームであり、GM裁量の範囲が広すぎる事から(マルチ・ゲーム的に遊ぶプレイヤーからは)不満が出かねない。自分の感じた問題点はこのあたりです。少なくとも、GMが明確な基準を持って運用しない限り、事故率が高いように感じてしまいました。
#方向性は異なれど、シノビガミはこの辺の処理がきっちり作ってありますね
 ルールの隙間が大きいのは、おそらく意図的なデザインなのでしょうが、プレイヤー同士の信頼と了解がきっちり取れていないと、高確率で事故が起きるように思えます。題材が題材なだけに、不快感やしこりを残す可能性がある面子なら、避けた方が無難かもしれません。


 てなわけで、今週持っていく計画は延期します。リファレンスがだいたいできあがっているから、そのうち打つかもしれませんが・・・現状ではGMの軸足も定まらないままですので。