断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

12/19の覚え書き

 公式活動は今週で終わり。
 来週は小さな集まりがあるらしいので、公式例会には持って行きにくいものでも遊んでみようかと目論んでおります。
 DitVのレポは、少し長め&公開シナリオのネタバレありです。


・1部
 OBのSさんによるベルファール魔法学園。
 PCは魔法が苦手あるいは使えない落ちこぼれで補講に出席するのだが、そこにテロリストが現れて学校を占拠。自称「剣の世界」と名乗る連中と戦いを繰り広げる・・・。とかいう展開。
 相変わらずの一発ネタが冴えておられました。
 学園において魔法が使えない人間に対する侮蔑の情が溢れていると聞いていましたが、案外ライト風味だったため、PCは一丸となってテロリストに対処する流れに。一人を除いては残された謎には突っ込まず、クトゥルフの探索者なら明らかに失格なキャラになってしまいました。


・2部
 自分がGMでDogs in the Vineyard
 架空の19世紀半ばのアメリカを舞台に、ガンスリンガー聖職者となってコミュニティの問題につけ込む悪魔や異端と対峙するようなシステムです。
 シナリオは、小さな町に根を張った人間関係からなります。信徒たちのコミュニティは歪みから崩壊に向かいつつあり、神の威光と無骨な銃でそれを食い止めるのがPCたちの役割です。問題点へのアプローチや対処は全てPCたちが決定し、手を下します。
 今回は、直前で予定変更をやらかしたこともあり、こちらで公開されているJANUARY BRANCHを遊びました。山の民(ネイティブ・アメリカン)と白人との融和と軋轢、そして深い憎しみがやがて殺戮を産み落とすような設定です。
 プレイヤーは3人で、PCである神の番犬は次の通り。なお、ジョン・Lはセッションに登場するNPCであり、縁故を振る対象候補として提示したものです。セッション前の説明はジョン・Lの性格と、今回向かうジャニュアリーには山の民の改宗者が幾人か暮らすという情報のみで、キャラクター設定に関して、直接的な誘導は行っていません。

ブラザー・クラム
 白人と山の民の混血。スピリチュアリズムに通じた母を悪魔崇拝だとして父に殺され、自らの手で父とその愛人を射殺。生命の王に仕える聖職者に救われて、西部へと渡ってきた。由来不明の癒しの力を使うことができ、悪魔への縁故を所持する。通過儀礼で悪魔払いを成し遂げる。


ブラザー・デビット
 裕福な家庭に生まれ、堕落した東海岸に遊びに行っては、飲む、打つ、買うに耽溺。ジョン・L・フレイザーという製粉業者の息子ともそこで親交をもつ。根性をたたき直すために、親によって番犬の神殿に叩き込まれる。任期を終えれば、出世の道が開けると期待しており、勝つためには手段を選ばない。通過儀礼で人々に教えを説いて回る伝道の話術を学ぶ。


ブラザー・アイザック
 狩人の子として荒野で銃の訓練を受けて育ち、世間というものをほとんど知らない。敬虔な母の影響を強く受け、神の教えを基本的には信じ込んでいる。通過儀礼で世間知を学ぼうとするが、結局「世間の人々は余計なことを気にして生きている」と知っただけだった。


 シナリオの設定概要は次の通り。

 ジャニュアリーの世話役ロレンツォの妹は、山の民に5年間奴隷としてとらわれ顔に入れ墨まで入れられた若き白人女性である。名をオリーヴといい、彼女は生命の王の教えに改宗した山の民に、彼らの言葉で教えを説きつつも、拭い切れぬ深い憎しみから歪んだ信仰を教え込むに至る。やがてその小さなクラスは、山の民への憎しみと自己嫌悪を柱とする密やかなカルトと化してしまった。オリーブは情熱的な製粉業者ジョン・L・フレイザーに恋をして、そこに救いを見出そうとするが、彼は山の民から改宗した美しき娘ユニティと相思相愛であり、世話役からの圧力にも屈せず結婚の求めをはねつける。オリーヴはついに悪魔の力を借りた邪術師となり果て、ユニティに死の病を患わせる。彼女が人々の間にばらまき続けた悪意は、ジャニュアリーに暮らす人々の心の底に「山の民は生命の王の敵」という間違った考えを植え付けており、ジョン・Lはユニティの病を近辺に暮らす山の民の呪い師によるものだと思い込んでいる。PCたちが着いた日のうちに、彼はユニティを病から解放すべく、銃を手に山へ向かう。ひとたび殺人が起これば、息を潜めていた憎悪は表出し、白人と山の民による争いが勃発することだろう・・・。

 DitVのシナリオには物語の流れというものがありません。町に暮らす人々の関係と、秘密が記述されるのみです。また、番犬たちが訪れなかったときには何が起きてしまうのかも決まっています。そこに切り込んで、NPCにアプローチすることで情報を集め、「誰を裁き、誰に慈悲をかけるか」決定するのかは、全てPCに任されています。
 システムは状況を暴力的に加速させる傾向を持っており、PCたちがよかれと思った行いが、事態を悪化させてしまうことすらあり得ます。そうやって番犬たちの歩んだ、暴力と救済の道が、ストーリーとなるわけです。

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 PCたちは番犬の神殿にて、世話役から仕事の説明を受けてジャニュアリーに旅立つ。町の世話役であるロレンツォへの手紙を、デビットは盗み見して、そこに皮膚整形に関する医者からの助言を読み取る。町に着いたPCたちは、町の背後にそびえる山々と、その中腹に位置する山の民の居留地を目にする。道すがらデビットは、水車小屋の看板にフレイザーの名を読み取り、懐かしさからそちらへと向かう。
 ロレンツォに面会したクラムとアイザックは、彼から妹の苦難に満ちた人生を聞き、彼女を製粉業者であるジョン・L・フレイザーと結婚させてやりたいという頼みを受ける。世話役の妻はフェースという山の民の女性なのだが、彼女は英語を話すことができず、ロレンツォが世間に自らの寛容性を示すために娶ったという印象を受ける。クラムが山の民の言葉で話を聞いたところ、酷い自己嫌悪に陥っており、自分なんかは到底ロレンツォの慈悲に値しないから、離縁するための許可を与えて欲しいと訴えてくる。
 一方、水車小屋ではデビットがピートという名の山の民の青年から話を聞いていた。ジョン・Lは病に伏せるユニティの看病にあたっており不在なのだが、ユニティを密かに想っているピートは二人の関係をなかなかデビットに打ち明けなかった。やがて案内しながら、ピートは番犬が奇跡を起こせるのかと聞いてくる。彼は自分がユニティの心を捉えるような「白人」になりたいと望んでいたのだ。
 ジョン・Lと再会したデビットは、彼が野蛮な山の民の呪い師を撃ちころさんと、今にも銃を持って飛び出そうとするような怒りに満ちていることに気がつく。ユニティは意識が戻らずうわごとを呟くばかりだが、その中から「あの女・・・」というフレーズを聞き取る。その頃、クラムとアイザックは学校にてオリーヴと面会していた。顎元の入れ墨を隠すように布を巻き付けた彼女は、訝しむPC二人に自分の心情を説明する。「生命の王の教えに従い、山の民への恨みは一切無い」と。どことなく釈然としないものを引きずりつつも彼らはいったん、宿となる神殿へと向かう。


 神殿で合流したPCたちは情報を交換し、ジョン・Lを止めるため、またユニティにクラムの持つ癒しの力を試すために、ユニティ宅へと足を向ける。だが、クラムの顔を見たジョン・Lは、山の民の血を引く彼がユニティに触れることを拒絶。説得され、クラムがユニティに力を試している間に、自分は山の呪い師を撃ち殺してくると宣言。ユニティは既に虫の息であり、助けるためにできることは全てやろうとしての発言であった。
 PCたちは言葉で押しとどめようとするが、GMはその時点で集まっている情報と会話の進め方を見て、ジョン・Lを止めるためには力ずくで押さえつけるなどの手段が必要と判断。コンフリクトは会話から近接戦にエスカレートして、最終的にジョンは銃を抜き、道を開けるように叫び、続いて発砲する。それに反応したPCたちは全員、争いの領域を銃撃戦にエスカレートさせて銃を構える。そして、デビットが脅しのつもりで、ジョン・Lの足下を狙って銃を発射。ところがジョン・Lの足に命中してしまい、5つの銃による余波が発生する。何とか抑え込んで、争いは終了。ジョン・Lの余波ダイスを振ったところ、17の致命傷にいたり、その前の近接戦の分も加えるとクラムの応急手当も及ばず、死に至る。
 銃声を聞いて駆けつけてきた町の人々とロレンツォに、番犬たちは「ジョン・Lが悪魔に取り憑かれ襲いかかってきたため、やむを得ず撃ち殺した」と説明してなだめる。続いてジョン・Lの死体に悪魔付きのしるしを細工してロレンツォに示し、さっさと火葬して証拠隠滅を計ろうとする。
 その間に、クラムはユニティに力を試す。不可思議な淡い光と共に、彼女の病は体より去る。ユニティを心配してやってきたピートはその光景を見て、彼の奇跡の力を崇める。自分を白人にできないかというピートの問いに、クラムは偏見の誤りを説く。そして、誰が彼にそのような考えを吹き込んだのかを尋ね、オリーヴの名を得る。
#クロムは余波で経験を振りまくり、この時点で尋常ならざる癒し手となっていた
#GMは癒しの力を過剰演出することで物語を広げる一方、
#根源には悪魔の力が潜んでいるかもしれないと、何度か示唆を行う


 今やPCたちの疑惑の中心にはオリーヴがいた。
 神殿にて追悼のための儀を行うという名目で、デビットがジョン・Lの死を嘆くオリーヴとロレンツォを招いて足止め。その間に、アイザックとクラムはオリーヴの私室(ロレンツォの家に同居)に悪魔崇拝の証拠を求めようとする。部屋からは手がかりを得ることができなかったものの、家に残っていた殻に閉じこもった女性、フェースを諭すことで、オリーヴの山の民へのクラスがカルトになっていたことに確信を得る。加えてユニティもそこに通っていたというのだ。
 ついに町の秘密を全て掘り起こしたPCたちは、神殿に残っていたオリーヴと対峙。ロレンツォもいる前で、彼女が何をしたのか述べ立て、彼女を告白させようとする。彼女は邪術師であり、望むなら悪魔の力を借りて、かつ憑かれたものとなることもできる。世間体を大事にするロレンツォも、妹が何をしたのか公表されるとなれば、仕方なく彼女の側に着くだろう。3対2+悪魔の影響なら、戦闘となればPCも無事では済まないだろう、というのがGMの心づもり。
 だが、オリーヴに悔悟を迫る説得は十分に彼女の気持ちを汲んだものだったし、PCは全ての情報を得ていた。加えて、コンフリクトの最後に、クラムが癒しの力を使って、彼女が恥としている入れ墨を消す試みを行う。入れ墨を消すことは可能なのか? GMとしては少し迷ったが、クラムの癒しの力は、既に物語の重要な要素となっていると判断。入れ墨の上においた手を離すと、オリーヴの傷は消えていた。
 オリーヴはエスカレートさせることなく、コンフリクトを終了させて自らの罪を告白し、強く悔いる。ロレンツォも交えて話し合った番犬たちの結論は、「オリーヴの罪は公表することなく、彼女は婚礼の滝の町にある番犬の神殿に入れて、自らの罪を償う番犬となる」「今回の事件は、全て悪魔に取り憑かれたジョン・L・フレイザーの仕業と発表して、人心の動揺と、山の民との争いの抑止を行う」というものだった。これで話は丸く収まったかに見えた。


 だが、納得しないものが一人いた。
 そう、ジョン・Lを深く愛し、悪魔による病で死に瀕していたユニティだ。自らもオリーヴのカルトにいた彼女は、真相を知っていた。だから、目を覚ましてジョン・Lの死を知ったとき、オリーヴの仕業だと思い込んだ。ユニティは護身用にジョン・Lからもらっていた銃を手にすると、復讐のために神殿へと向かった。そして、ロレンツォと番犬たちの密約を聞いてしまったのだ。
 ユニティは激高し、愛するジョン・Lの名誉を傷つけさせはしないと宣言する。町の皆に、このことを知らせ、罰を受けるべきオリーヴに正当なる裁きを与えると言うのだ。彼女の立場に立てばまっとうな要求だし、正義もそちらにある。だが、町には混乱と、新たな恨みの種が蒔かれることだろう。番犬たちの答えは、彼女を捕らえることだった。
 だが、その場で動きを封じたところで、彼女の処遇をいかにするかは決まっていなかった。たとえ、婚礼の滝の町に連れて行ったところで、彼女は神殿にて真実を叫ぶ訴えを行うだろう。だから、彼女を取り押さえるコンフリクトで余波ダイスが多めに発生したのには、「いっそ事故で死んでくれれば」という心が垣間見えた気がした。そして実際、フォールアウトで12を振ってしまい、肉体による判定にも失敗。クラムが手当を行うになる。
 これはダイス目の関係上、ギリギリで失敗。だが、GMはクラムの最後のレイズ時に囁いた。「悪魔へと呼びかけを行って、縁故である3d8を使えば成功するね」と。しかし、クラムのプレイヤーは、呼びかければ癒しの力が悪魔をその源としていることになると判断。あえてユニティを死なせた。
 結果だけ見れば癒しの力は、愛ゆえに他者の憎しみに踊らされた男を助けず、呪いを受けた乙女を病から救うも新たな絶望に直面させ、多くの苦しみを為した女性を救済し、正義を叫ぶ乙女を救わなかった。ダイス目によるものとはいえ、背景にあるものの意図が透けて見えるような趣があり、面白かった。


 そして番犬たちは町を去った。
 いくつかの不安の種を残しつつ、新たに番犬となる女性を連れて。

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 キャラクター作成は、説明込みでかなりゆっくりやって3時間。実セッションは5時間ほどかかりました。
 ルール慣れしていなかったことが大きく、不必要なコンフリクトもいくつか挿入してしまった結果です。次回からはルールブックの通り「Roll dice or say yes.」を心がけようと思います。
 GM側からのストーリーの誘導は、ほとんど行っておりません。最後のユニティの行動ぐらいですかね。他は全てPCの行動に対するNPCのレスポンスを考え、演じるのに専念しました。なので、GMなのにプレイヤーを遊んだ気分にもなっていたりします。


 システムの個人的評価は、非常に高いものがあります。
 ともすれば暴力に傾きやすく、血を流さずに事態を解決させようとするのは難しい作りになっています。かといって軽い気持ちで銃による解決に頼れば、血の雨が降り注ぐことになります。加速度的に死亡率が上がる後半は特に。当然ながら、PCに無理強いされたNPCもただ黙っているわけではありません。
 問題を解決するには適度な暴力が必要なのに、歯止めがきかなくなるルール。
 舞台設定と合わせて、秀逸なデザインだと思います。TRPGに復帰してから遊んだゲームの中で、最も感銘を受けました。


 参加していた大Tさんからはいくつかツッコミを受けました。
 一つ目はジョン・Lの死亡について。これは、プレイヤー的には「脅して止めるだけのつもり」だったのが、GMが「わざわざ5つの小さな目で受けを行ったため」死に繋がったのです。GMとしては「ジョン・Lは必死に突破したがっており、小さな目は捨てて少々負傷しようが、山へと向かうと判断した」のと、「銃は死をやりとりするための道具であり、それを(エスカレートによってダイスが増えるからといって)安易な形で用いることへの警告を、中盤で行っておきたかった」のでそうした次第です。しかし、プレイヤーからは「GMの持ち出目で、ぎりぎり受けを行える数字を出したのに、わざと負傷を大きくする受け方をするのは、GMの意図を反映しすぎではないのか。そのNPCは、恋人を助けようとしているはずなのに、まるで死にたがりの行動じゃないか?」と捉えられたようです。
 まあ、実際のところ、「こんなにあっさり死ぬとは思わなかった」というシステムへの不慣れが原因でもあるわけですが。中盤でいきなり、ジョン・Lが死ぬなんて思いもしなかったよ!
 もう一つが「説得が不可能ならそう宣言して欲しい。判定に時間がかかるから、無駄な行動は徒労感を伴う。」というもの。自分としては「もし、材料が足りなくて説得できない状態であっても、まず会話から入ることは相手のリソースを最も危険の少ない余波ダメージで削る有効な手段。最終的には実力行使になだれ込むとしても、そのプロセスはゲーム的な意味を持つ。だから、PCの取れる手段について、GMから提案すべきではない。」という考えを持っています。これはゲームに対する考えの違いだろうから、どちらが正しいという解は無いと思います。


 相当に気に入ってしまったので、また遊ぶ予定です。次回は自作シナリオで。前に書いていた、深淵世界を舞台にしたセッションもやってみたいところ。
 参加者のみなさま、長らくお疲れ様でした。そして暴力と血と救済の物語をありがとう。


・3部
 ロックをやったらあっさり終わる。
 あとはだべーりだべーり。