NPCを特徴付ける
NPCを魅力的にするのはセッションを盛り上げる一つの手段です。
異彩を放つ悪役はPCたちのモチベーションを引き上げますし、癖のある脇役は場の雰囲気を操作するのに有用です。NPCの説得をクライマックスとするタイプのシナリオなら、そのNPCがプレイヤーを惹き付けなければ始まりません。NPCはいわば、PCたちの感情を操作するための鍵なのです。
ステレオタイプなNPCを出せばPCがお約束通りに反応してくれる、と期待するのは基本的に間違いです。なぜなら、GMにとってのお約束がプレイヤー全員に共有されていることはほとんど無いからです。とりあえず女の子NPCを出せばPCたちは助けてくれるだろう、などといった安易な設定をしてしまい、実際のセッションではPCが別方向に歩み出して迷走、なんていうケースをごく希にですが目にします。
自分の場合は、アニメ自体ほとんど見ないし、漫画も最小限、ライトノベルとも縁遠い人間です。なので、お約束的な受け答えをプレイヤーに求めない方向でNPCを設定しています。それゆえ、印象づけるためにあの手この手でプレイヤーの注意を引こうとするわけです。そこまで極端ではなくても、基本的にお約束はわかってもらえないもの、として作った方が無難だとは思います。
NPCの味付けのさじ加減次第で、セッションの方向性を大きく変えることもあります。上手い印象付けを行なうことで、PCを自然とシナリオの本編にのめり込ませるといった効用が期待できます。反面、やり過ぎるとPCが必要以上にびびって萎縮してしまう可能性もありますが、そこから盛り上がることもよくあります。なので恐れずにNPCに彩りを添えていきましょう。
以下は、自分がセッション中に用いているNPCの味付けです。ごく基本的なことしかやってませんので、差し支えなければ、みなさまが用いておられる方法などもコメントしていただければ助かります。
1.演技
喋る際の抑揚や目の演技でプレイヤーの注意を引きます。
話題を切り替える時に「ところで」とつなぐとしても、大仰に言う、気弱そうにどもりながら言う、嫌らしく言う、などを使い分けるだけでずいぶんと印象が変ります。手の動きなどを交えるのも有効です。コツを掴めば言葉一つで雰囲気を転換することも可能です。目力につきましては、天性の部分がありますし、無理にしなくていいです。
この能力にはプレイヤーとしての経験が大きく関わってきます。幅広い設定のキャラクターをPCとして演じたり、得意とするタイプのキャラクターを見つけ出すことで、補強されていくからです。
私個人は声が細いので演技の幅は狭いです。それでもいくつか得意なキャラクターのレパートリー(狂人とか狂信者とかきちがいとか!)がありますので、それで補います。深淵のGMが多かったためか、夢歩きカードの読み上げ時の抑揚など、変な経験を積んでおり、それが役に立つこともあります。
演技は個人差が大きく響くため、無理矢理にでも体得する必要はないと思います。しかし、臨場感が全然違いますので、気を配っておいて損はないでしょう。
2.描写
どのようなNPCであるか、登場時や印象を与えたいシーンで説明します。
注意点としては量をできる限り絞ることです。昔はアドリブで一分近くのキャラクター描写が可能でしたが、結果的に印象が薄まるだけであり全く有効ではありません。例えば「騎士の鎧の色は青に近く、波紋のような精緻な縁取りがなされている。面当てを上げ、あなた方に見える顔は、ピーナッツ型の瞳が印象的で全体的に端正。ただし、頬から口にかけて走る醜い刀傷がそれを損なっている。彼はあなたたちを油断なく睨み付けると、重い騎士鎧をものともせず、馬から軽やかに下りる。『何者だ? 汝らも我が封土に仇なす輩か?』と言う。古風な訛りで、声には北風のような冷たさがこもっている。さらに・・・」とか、いくらでも続けられますが、全く意味のない努力となります。
印象づけたい部分を絞り、事前に用意しておくのが安全です。単純な外見描写のみではなく、別の感覚に訴えかけるよう試みるのもよいでしょう。重要なのは、NPCのどの部分をPCに印象づけるかです。
例えば、ファンタジー世界で、PCたちの前に馬車から姫君が降りてきたところを考えてみましょう。
「綺麗なお姫様がおりてきたよ。」これは描写しないも同然です。
「透き通るように白い肌と、対照的な漆黒のドレスに身を包んだ姫君が歩み寄って会釈をする。瞳も烏の羽と同じ色だ。」若干不吉な印象を与えられるかもしれません。
「姫君はあなたの手を取る。すべすべして、生まれてこの方、苦労というものを知らない貴族の手だ。畏れににか、僅かに震えているのを感じた。」視覚以外の感覚から、弱々しさを印象づけます。
簡単ですが、PCの反応をハンドリングするのに使えます。
3.台詞
印象的な台詞を一つでもよいので準備しておきます。
うちのサークルでは、「PCを作る際、性格を表す台詞を3つ設定しておくこと」という決まり事があります。私個人は苦手なのですが、これで慣れておけばNPCを設定する時にも応用できます。使わなくてもいいので、台詞と性格を考えておけば、PCたちが予想外の行動をとったときにも、臨機応変に対応できるというわけです。
これも描写と同じく、長々とした台詞よりも切れ味の鋭い一言が理想です。
性格設定を利用してアドリブで印象的に振る舞おうとするなら、引き出しの多さがものをいいます。ジャンルを問わず、良質な作品に多く触れ、キャラクターの引き出しを増やしておきましょう。用いる際は、「プレイヤーの知識に頼らない」ものとして丁寧に描写することを忘れずに。あなたにとってのお約束は、万人にとってのお約束ではないのです。
4.相手に合せる
あまり描写等を行なわずに、プレイヤーの期待するNPC像に合せていくという方法です。上記3つが「押し」なら、「引き」の手法と言えましょう。
NPCに対して、PCに共感を抱かせたい時などに有効です。個人的にはNPCを印象づけるための他の手段に織り交ぜていく感じで使いますが、得意ではないので調整程度です。上手い人なら、PCの心をがっちりとらえることが可能でしょう。
天性の会話術や、慣れや、引き出しの多さがものを言う方法です。
ざっと並べてきた感じ、あんまし有用にうつらないのが困ったものです。
当たり前すぎることなので、何を今更感が強いかも。
個人的に、NPCを出すとき一番注意しているのは、「元ネタがわかってもらえると思い込む罠にはまらないこと」と「受け身なだけでPCの思い入れのみに頼る、いわばまぐろにしないこと」の二点です。
以上、あまり役に立たない場当たり記事でした。