断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Mouse Guardのレポート

 土曜の1部にMouse Guardを2ターン遊びましたので、簡単なレポをあげます。
 付属ミッションFind the Grain Peddlerのネタバレを含みます。

セッティング

 時間不足からサマリーは体裁を投げ捨て、4枚の暫定版を辛うじて準備。背景世界パートは師匠の記事から拝借させていただきました。多謝です。この記事内では、不親切にも背景世界や細かいルールに関する説明をほとんど行いませんので、上記リンク先をご確認いただければ幸いです。
 ミッションはサンプルから、Find the Grain Peddlerを使用。プレイヤーは4人でした。


 サマリーを手元に置いてもらってのルール説明の際、全体の見通しはいいルールなのに仔細な項目が多すぎることから「RPGを遊んだことのない新人さんには把握できないのでは?」との意見。テキストの説明で特に伝わりにくかったのがコンフリクトのルールでしたが、実際に遊んでみるとすぐに了解していただけました。初心者向きといえるかは疑問ですが。
 ルール確認とキャラクターのデータをシートに写してもらい、プレイヤーごとにちょっとしたアレンジを行うのに要したのは、1時間ちょっと。自作ルールは面倒なので、ミッションのテンプレートPCとして掲載されている4匹をそのまま使いました。
 開始時に「Mouse Guardのセッションは短いので、他卓との時間調整のため、報酬計算を行った後に2ターン目を遊ぶかもしれません」と通達。しかし、「どうせ長いんでしょ」と信用されず。日頃、平均セッション時間が4時間強な僕の発する「短時間」という単語は、既に狼少年の言葉と解されている模様です。ぐすん。


 さて、今回の面子割り振りは次の通り。
ケンジー 冷静で忍耐強い巡邏隊のリーダー。
     2回生Hさんが担当され、7匹の子持ちという設定が付きました。
サクソン 武に長けたケンジーの親友。性格は正反対。
     強いキャラを愛しすぎの2回生Uさんが担当。
サディ  衛士総長からも信頼厚い有能なメス鼠。
     3回生のKさんが担当。他衛士から一歩引いたスタンス。
リーアム 斥候を得意とする若き衛士。自分の力量を認めてもらいたい。
     OBのAさんが担当。いつも通り一番アクティブでした。

Mouse Guardのセッション構造

 Mouse Guardのセッションは『導入』→『GMのターン』→『プレイヤーのターン』→『終了時の報酬計算』という構造を取ります。
 GMのターンでは、ミッション達成に必要な障害をGMが提示して、プレイヤーがPCの能力や技能などを創意を凝らして駆使することで乗り越えます。PCの自由気ままな行動は基本的に許容されず、協力してミッションにあたることになります。
 それが終わればプレイヤーのターンです。この手番では各PCが望む行動を試みることができます。状況の描写も含めた、語りの権限がプレイヤーに譲渡されます。全PCはそれぞれ1回の行動機会を得ます。加えてGMのターン中に、PCの特徴を不利に用いてテストに失敗することで、追加の行動機会をもらうことが可能です。
 双方が1ターンを終えた後にもミッションが続くなら、プレイヤーのターン処理が終われば即座に2回目のGMのターンが始まります。
 その日のセッションが終了なら、各PCの「信念」「目的」「性癖」に関係した行動をとれたか、「任務」にどれだけ貢献できたかを確認して、それに見合った『運命点』と『個性点』を受け取ります。これらは一種のヒーローポイントで、以降のセッションで大きな助けになるわけです。


 今回は2ターン回したのですが、最初のターンを終えた時点で一度報酬を与えるという、変則的なプレイスタイルを取っています。キャラクター設定に沿って動くようプレイヤーを促すためです。単発だから、ルール通りにやって報酬の効果が体感できないのはもったいないですからね。

GMの第一ターン

 Find the Grain Peddlerは、ロックヘイブンにて衛士総長であるグウェンドリンから、行方知れずになった穀物運搬人を捜す任務を受けるところから始まります。彼にはスパイの疑いがあるため、早急に見つけ出す必要があるのです。
 いきなり彼女の執務室から始めるのは味気ないと思ったので、ルールブックに記載されている秋祭りのイラストを見せつつ、PCたちがそれに参加して羽を伸ばしているシーンを軽く挟みました。任務を受ける際、ケンジーが「スパイ疑惑のある人物なら、足取りを追っていた衛士の関係者がいたはずなので、話せませんか?」と尋ねたので、カートという間諜をでっち上げて「現地で合流出来るかもしれない」と告げました。機会があればCircleのテストで協力者として出そう、と心に留めつつ。


 さて、このミッションは原野と鼠を障害としてあげていますが、実際に記載されているのは後者のみです。なので「どんなルートを使って穀物商人に追いつくつもりかね? 街道沿いを強行軍で進むのが正攻法だろうけど、森を突っ切ってもいいし、川をボートで下ってもいい。他に提案があれば考えるよ」と告げました。プレイヤーは話し合い、結局街道を突き進むと選択。全員の協力でOb4のテストを突破して、新しい轍の跡(穀物運搬人は引き車で穀物を運んでいる)を見いだすところまで追いつきます。


 次にシナリオ記載通りに、穀物運搬人の本能とPCの斥候技能とで対抗テスト。GMの出目がよかったため失敗してしまい、野生動物のひねりが挿入されることとなります。轍を追ったPCたちが見いだしたのは、街道の少し外れに放置された穀物満載の引き車のみでした。彼はミルク蛇に呑まれてしまったのです。
 ところがPCたちは「スパイが行商人の偽装を投げ捨てて、道を急いだのではないか」と考え、街道を進む選択を意識し始めます。その追跡劇も面白いと心動きかけましたが、我慢してミッション記載通りに蛇との本能対抗テスト。巨大な何かが這う音に気づいたPCがそちらに目をやると、穀物運搬人が被っていた麦わら帽子を発見。さらに、白い斑ある蛇の胴体を垣間見ます。
 追跡の対象が喰われてしまったと悟ったPCたちは、周辺調査のために蛇との戦闘を決意。コンフリクトが開始されます。


 PCが4人だったため、ケンジー&リーアムとサクソン&サディ組みにチームを分け、蛇に立ち向かうことになりました。サクソン&サディ組みが残り形勢1まで追い込まれたものの、最初の3アクションで決着。成功時の語りをプレイヤーに任せる戦闘はなかなか好評で、蛇の頭部に取り付き剣を振るうサクソンの、楽しい活劇シーンを演出することができました。「歩み寄り」ルールによりサクソンは負傷、サディは疲労にチェック。
 早速、蛇の腹を割いたPCたちは、半ば消化された鼠の遺体を発見。穀物運搬人が死亡していたため、穀物車をあさると宣言されます。記載通りにテストを行い、あっさり成功。穀物の中から運良くロックヘイブンの詳細な地図を記した手紙を見つけ出します。
 ここでGMのターンは終了。

プレイヤーの第一ターン

 リーアムとサクソンが1回ずつ追加行動権を得ていました。
 自分の力を仲間に示せなかったリーアムは、先行して穀物運搬人の目的地であったバークストーンに向かうと宣言。手柄を立てたい一心で先走るという構図はかなりそれっぽい。街道地図のアップデートが目的になっていたサディも同行します。Pathfinderの技能で失敗して両者疲労を被るも到着。サディは目的を完遂します。
 サクソンは傷を癒すのに2回の行動を消費。
 ケンジーはスパイを追っていた衛士関係者のカートを待つと宣言。Circleのテストに成功して合流後、地図を預けます。陰謀団の手掛かりが欲しいといわれたので、黒い斧を戯画化した図を彼らが符丁として用いていると告げました。
 リーアムは最後の行動を、バークストーンで荒くれに絡まれている女性を助けるのに使用したいと提案。彼の「性癖」に従って行動するシーンを作るためです。テストに成功したため、GMは望まれたシーンを演出後、「その若い娘鼠が『衛士様にご助力いただきたい事があるのです・・・』と口にするよ。その内容は・・・休憩後ね」と返して締めました。


 リーアムがバークストーンに進んだため、他のPCは行動を使わなくてもそこで合流出来ることにしました。少し自由すぎるぐらいに融通をきかせるのが丁度いい。

報酬計算と幕間

 報酬計算の結果、運命点の方はほぼ全員が3点全てを、個性点は手紙を見つけ出したケンジーにMVP、蛇を殺したサクソンに功労がつきました。
 ここまでに要したセッション時間は1時間35分。もう一卓が終わりにほど遠かったので、もう1ターンやることにします。「シナリオ作るから10分待って」と言い、みんながコンビニ買いだしに出かけている間、次のミッションとPCの目的を考えました。
 僕自身はMouse Guardの原作未読なのですが、ルールブックの記載事項と英語版Wikipediaの記事などから、少なくとも最初のシリーズがどのような顛末を辿ったか大まかに知っています。Find the Grain Peddlerは原作の第一話ほぼそのままであるため、原作設定を換骨奪胎する形で次のミッションを組み上げました。


 原作のネタバレはさすがに気が引けるので、第2ターンについては概略のみを記すに止めます。

第2ターンの概要

 リーアムが助けた娘クローヴの頼みとは、兄ソームが物騒な連中とつるみ、自分に別れを告げ行方をくらましたので捜して欲しいという話でした。その連中がどうやら自分たちの追っている陰謀団だと符丁などから推測したPCたちは、調査を開始。
 一人で酒場聞き込みを試みるケンジーと、おとり調査を実行しようとした残りの3人は、完全に分断されてしまいます。
 ケンジーは一味の潜り込むことに成功したものの、正体を感づかれ虜囚となります。サクソンらは周辺の森を探索しますが、冷たい秋の雨に打たれ、文字通り濡れ鼠となって全員病気を被る羽目に。協力をもらった季節との対抗テストがタイだったため、サディのプレイヤーが特徴『タフ』を用いて「頑健さにものをいわせて突き進み、みんなが追いついていないのに気づかなかった」と宣言した結果です。サクソンとリーアムのプレイヤーからはさすがに文句が出てました。うはは。
 ケンジーは拷問されるも情報は吐かず、逆に陰謀団の一員となっていたソームを説得します。追いついて一味に潜り込むことに成功した残りの一行は、ケンジーが囚われの身であることを知るにいたり、そこで親友のサクソンが激高。陰謀団の首領を巻き込んだ戦闘コンフリクトが発生します。第一ターンで取得していた運命点と個性点が大量投入されたこともあり、あっさりとPC側の勝利。
 チーム内で異なるコンフリクトの目的が宣言されていたにも関わらず、GMが聞き逃していたため、3人目の目的宣言しなかったチームメンバーに決めてもらうという措置をとりました。結果、首領は討ち取られたことに。


 プレイヤーのターンは実質エンディングとなりました。
 地域の状況を知るに至ったリーアムは、反乱に荷担しようとしていたネズミたちを辛うじて思いとどまらせ、その間にケンジーとサディはロックヘイブンを目指します。第2ターンで追加行動を得ていたのはサディ(上記失敗の選択による2チェック)だけだったのですが、そのおかげで2回目の追加行動をケンジーに渡すことができまして、彼はそれを用いてグウェンドリンを説得したのです。
 ロックヘイブンを危険にさらしてでも匂境に隣接する街の防衛を強化する決断がなされ、PCたち巡邏隊はその責任を負うこととなりました。
 彼らの旅が続くとしたら、それはバークストーンを中心としたものとなることでしょう。そんな感じで終了。
 所要時間2時間27分なり。

感想

 参加プレイヤーには概ね好評でした。
 プレイヤーが主体的に語るスタイルはかなり楽しかった模様。Dogs in the Vineyardなどでは煩雑だと否定的な評価をもらったナラティブ・スタイル受け入れられたのは、語り部が入れ替わる上にスピーディだったからか、相性のいい面子が揃ったからなのか、はたまた1年近く布教活動したため少しは警戒水位が下がったからか。
 ルールは遊んでみると簡単に飲み込めるが、細かなルールが多いため戸惑ったとのこと。特にコンフリクト周り。RPGを遊んだことのある人ならともかく、RPG経験すら怪しい新人さんたちに提供するのは無理がありすぎるとの事でした。
 まー、サマリー作っていた時点でわかっちゃいたけどね。新歓期のシステムどーしよう・・・。


 GM的には、プレイヤーの自由度とシナリオ上の障害とを完全に切り分けるスタイルは新鮮。
 組めるシナリオにどうしても制限は出てくるものの、今回の様子を俯瞰する限り、大体はうまく機能していると思います。
 第2ターンでは、初っ端で分断したため時間を食いましたので、誰かが行動を起こしたなら(少々強引にでも)全員をそれに引っ張らせる形が運用しやすいでしょう。「・・・ところで一方その頃・・・」は禁句であります。
 あとまー、行動には判定が伴うため、PCのテスト結果に左右されすぎるNPCの言動に振り回されまして。連続していないと入り込みにくいなと思った所存。ここはGMの好みに寄るかと思われます。


 Mouse Guardはキャンペーン運用が前提のシステムであり、単発ではプレイヤーのターンと報酬のルールが生かし切れない感じです。
 いつになるかわからないけど、次に遊ぶならキャンペーンのGMでやってみたいな。