断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Apocalypse Worldのプレイ例テキトー訳

 AWの152ページから158ページの「Rules of play: MOVES SNOWBALL」にある、プレイ例をヘボ訳してみました。
 AWのルールは曖昧なままにされている部分が多く、プレイの場で展開しているフィクションと連結することで、具体的な形をとります。
 ただ、曖昧な部分が多いため、どこまでがGM裁量なのか、プレイヤーには見えにくいとの意見をいただくこともあります。


 AWは決められたストーリーや、手順の決まったシナリオを用いません。
 それどころか、マスターが自分の望むシーンにPCを誘導したり、追いやったりすることさえ「するな」と明記されています。
 そのためMC(GM)の基本スタンスは、プレイヤー・キャラクターの次の行動を誘発する事態を引き起こし、PCたちが取る行動から新たな事態を作り出すものとなります。
 それがどういったものなのか、どうやってなされるのか、以下の例はいくつかの示唆を与えてくれることでしょう。


#実際のプレイでは、次のように双方がムーヴを順番にやりとりすること進行します。
#《》内はPCムーヴ、【】内はMCムーヴ、[]内は選択肢となります

ムーヴの雪合戦

ブレイナーのマリーはアイルに苦しみを負わせるべく、彼女を探しに出る。そして、車庫の屋根の上で彼女が桃の缶詰を食べているところを見つける。兄弟のミル、恋人のプロヴァーが一緒だ(全てNPC)。


「《状況を読む》よ」と彼女のプレイヤーは言う。
「そうなの? 緊迫した状況かな?」と私は言う。
「そうなったんだよ」
「あー、なるほど」と私は言う。私は完全に理解した:3人のNPCは気がついていないが、マリーの到着は状況を緊迫させたのだ。もし映画なら、サウンドトラックが勢いを増し、どんどん不吉な感じになるところだろう。


彼女はロール+シャープを行い、7-9の部分成功を得たので、彼女はムーヴのリストから1つ質問できるようになる。「どの敵が最大の脅威になってるの?」と彼女は言う。
「プロヴァーだ」私は言う。「たぶんね。彼は防具を脱いでいるけど、長靴に小さな銃を隠している上に頑丈な野郎だから。ミルはたった12才で、暴力的なガキじゃない。アイルはもう少しタフだが、プロヴァーほどじゃないよ」
「うーん、すぐにでも逃げ道が欲しいところだ。再度《状況を読む》ことができるかな?」
「もちろんダメ」一度得たのだから、状況が大きく変わるまではね。
「わかったよ。《心に語らう》をアイルに使うよ」
「いいね、どうやるんだい?」
「えーっと、相互にやりとりする必要は無いから、彼らの下を通り抜けて彼女が私を視認できる場所に行き、見上げることなく彼女の心に囁こう」彼女はロール+ウィアードを行い、10+の成功。
「何と囁くの?」
「来い」と彼女は言う。
(注釈:アイルを車庫の屋根から飛び降りさせようとしている)
「よし」と私は言う。「彼女はゆっくりと前方に向かって腰を上げ、あなたの前に飛び降りようとするが、それから何かを考えているかのように頭を傾げる」
「ダメだ」とマリーのプレイヤーは言う。
「彼女は[思慮に欠けた振る舞いを引き起こし、それを甘受する]よ」と私は言う。「1損害をくらう、でいいんだよね? それじゃ騒音の有無は?」
「アイルの畜生め。騒音は無しで」
「よしよし。プロヴァーは彼女が自分の肩に頭をもたせかけたぐらいにしか思ってないけど、彼女は耳から出血しており、血によって肩のところでシャツがべたついていることにそのうち気がつくだろう。近くにいておくのかい?」私は【起こりうる成り行きを告げ、尋ねる】。
「そんなわけないだろ」
「どこへ行くんだい?」
「家に帰るんじゃないかな」
「じゃあ一時間後は家にいるのかな?」私は【画面外の出来事を考えている】:プロヴァーが仲間を集めるのにどれぐらいを要するのかと。


「待ってくれよ、たったの1損害じゃないか・・・」
「分かってる。彼女は大丈夫だろう。来るのは最大の脅威であるプロヴァーだよ」これは【公正さが要求すること】だ。「一時間後は家にいるの? それとも他のところにいるのかな?」
「くそ。ああ、家だよ」
「お茶でも飲んでいるのかな?」【狂おしいほどに質問する】!
「お茶はないな。歩き回っているかな。銃と苦痛波投射機を持って、ドアに三重の鍵をかけておくよ。ロアークがここにいたらなあ」


「いいね。キーラー・・・」キーラーのプレイヤーに向けて「・・・君が武器庫の側を通っていると、そこにいる連中の声を耳にするよ。プロヴァー、チャーチ・ヘッド、ワッコフがそこにいて、武装を整えている。どうする?」私は【不吉な兆しを告げる】。
「おい、なにやってんだ?」とキーラーのプレイヤーは言う。
「マリーがアイルに攻撃を仕掛けたんだ」と私は、プロヴァーのぶっきらぼうな強い口調で言う。そして自分の声で「彼は手を止めると、しっかりとあなたを見据える。手にはショットガンを持ったままだ。チャーチ・ヘッドとワッコフは、知っての通り彼に加勢するだろうね」
ところで、ここには大きな計画がある。アイルは〈アイル一家〉という危険存在のキャストに名を連ねている。種類は〈難物:一家〉だ。その衝動は、【結束を固め、自分たち自身を守る】こと。一番愉快なのは、その衝動に沿って事態を動かしつつも、プロヴァー、チャーチ・ヘッド、ワッコフというキーラーのギャング・メンバーをアイル一家の武器として使っていることだろう。キーラーが彼らを用いて《攻撃的に振る舞う》か《力ずくで奪取する》のと同じように、その一つを行っているにすぎないのだが。
もしキーラーが許可するなら、そういった事態になるだろう。キーラーがギャング団に自分の意志を押しつけて、彼らを止めようと考えているなら、彼女のプレイヤーも同じように考えるだろう。彼女は口元を歪め、そのことを考えているようだ。
最終的には、そうする代わりに「全力を尽くせよ」と彼女は言う。
マリーのプレイヤー曰く「なんてこった、キーラーめ」


「じゃ、マリー。家にいて、歩き回って、武装して、閉じこもっている、でいいんだよね? 彼らは突然やってくると、ドアに本気の蹴りを入れる。ドア全体がガタガタ音を立てるよ。君はワッコフの声を聞く:『俺達が来ると予想していたんでしょうよ』」と私は【不吉な兆しを告げる】。
「覗き穴のところへ行こう」と彼女は言う。「彼ら三人がいるのかい?」
「うん」と私は言う。「ワッコフは左側にいて、プロヴァーとチャーチ・ヘッドは右側で何かをしており、プロヴァーは君に背中を向ける形だ。そして君は、ガガガ、ガガー、ブルルルという音を聞き、プロヴァーがチェーンソーを手にドアにところにくる。どうする?」私は【彼女を窮地に立たせる】。


「《状況を読む》。最良の逃げ道はどこだろう?」彼女はロール+シャープを行うが・・・運の悪いことにミスだ。「うげー」と彼女は言う。
私は厳しく直接的なムーヴを、望むままに行うことができる。難物の危険存在ムーヴから好ましいのは、この【首尾一貫した目的をもつ組織的攻撃を行う】なので、ここでそれをもたらす。
「君は(第4回で鉄格子をつけた)窓から外を眺める。そこが脱出経路であるかのように」と私は言う。「彼らはドアの端から端までをぶった切るわけではなく、上のちょうつがいを切り外すだけだ。それからこじ開けて、6インチの隙間を作る。ドアはぎしぎしと音を立てて、上のちょうつがいのあたりでバキッと折れる。そして彼らはこうやって、グレネードを投げ入れる・・・」私は拳を握ってグレネードに見立て、もう片手でぞんざいにそれを打つ。クローケーの球を弾くかのように。
「飛びつくよ、ええっと・・・」
悪いね、まだ厳しいムーヴの途中なんだ。これは全て誤解させるように仕向けているからね。
「いや、彼らは投げ入れるのに成功し、それはほとんど君の足下で爆発する。そうだね、グレネードだから、4損害、エリア、乱雑かな。防具はあったっけ?」
「1防護だよ」
「ああそうだ、防弾チョッキを着てたよね。わかった! 君は3損害を受ける」彼女はキャラクター・シートに印をつける「《損害時のムーヴ》を行ってね。ロール+3だよ」
彼女のロール結果は9となる。私はムーヴの7-9リストから選ぶ権利を得て、[足がかりを失う]にする。


「1分ほど、何がどうなったのかわからなくなる。そして次のような感覚を得る。馬鹿げているようにうつるだろうが、道理にかなっていると思うよ。そう、天井に叩き付けられたという感覚だ。おそらく何かに躓き倒れて、そのようにして叩き付けられたのかな? それから徐々に感覚が戻ってくる。頭蓋が砕かれていると思った音は、実際にドアが裂かれて倒れたことによるものだ。そして、血液が脈打つと感じた音は、彼らのチェーンソーだ。どうする?」
「苦痛波投射機を起動させるよ」
「よしよし」私は言う「それだと・・・」
「1損害、エリア、騒音、APだね」
「騒音は彼らの叫び声だな」私は言う。「彼らはこんな風に・・・」と、耳を覆うように手で頭を抱える。ふと思いついて、【照準機ごしに見る】と、私は付け加える「チャーチ・ヘッドはそうじゃなかった。彼は麻痺しているように見える。体をこわばらせ、声を発さず、目玉は眼窩の中でぐるぐると回っている。そこ以外はピクリとも動かない」1損害を受けるということは、NPCにとってはPCのそれよりずっと酷い結果を引き起こすのだ。「どうする?」
「侵入グローブを着ける」彼女は言う。私は異議を差し挟まない:もちろん彼女は常のごとくそうするだろうから。「プロヴァーのところへと突き進み、彼の頬に手をやる。《人形使いの繰り紐》を彼に使うよ:私を守れ、と」彼女はロール+ウィアードで10+を出し、優しく悪意を秘めて微笑む。


わかりにくいことがここで起きている。私は彼らの行動を告げ、それからマリーのプレイヤーにマリーが何をするのか尋ねるようにしてきたが、彼女は私から先制権を奪い取ったのだ。重要な処理では無く、私たちは相変わらず、双方共順々にムーヴを行ってい続けている。ちょっと注意しておく価値はあるだろう。


「素晴らしい」と私は言う。「ワッコフは後ろから君を掴むと彼から引き離す。が、プロヴァーは彼女に飛びかかる。彼は彼女の顔を殴りつけ、彼女はたじろぐ(言及してこなかったけどワッコフは女性なんだ)。悪態をつく感じかな? 君のプロヴァーへの〈影響〉はこれで使い果たされたんだよね?」
「うん」と彼女のプレイヤーは言う。「それでいいよ。彼のチェーンソーを拾い上げ、彼ら二人を切り刻むよ」
恐れいった。すごいもんだ。
「それは《力ずくで奪取する》ことだろうね。彼らの、えーっと、肉を。ロールしてくれ」と私は言う。
私はこれらのNPCを救うことに全く興味がない。少しもだ。彼らを照準機越しに見て、彼らが好きだけれども、彼らを無事では済ませない。


彼女はロール+ハードで7-9を出す。「私が負わせることになる損害はどれぐらい?」と彼女は言う。彼女は《力ずく奪取する》の選択肢を選ばなくてはならず、まずは何がどうなっているのか知ることを望むというわけだ。
「チェーンソーを使ってだよね? 3損害だね。乱雑だから、一人でも二人共にでも攻撃できるだろう。彼らは防具を着ている、けどまあ、1防護だね」
「じゃあ私が被るのは・・・?」
「そうだね、プロヴァーからはないな。君は彼から攻撃するだろうし、チェーンソーを落としてからは、どっちみち武器を持ってないからね。ワッコフはまだハンドガンを持っている。9mm相当だから、彼女からは2損害だ」
「構わない。[ひどい損害を加える]と[敵に感銘を与えるか、狼狽させるか、怯えさせる]を選ぶよ」
「じゃそれで」と私は言う。チェーンソーから3損害、ひどい損害で+1損害、彼らの防具で-1損害なので、合計3損害だ。「彼ら二人は既に1損害を受けているから、あと2損害で目的を果たせるだろう。君はプロヴァーの肋骨から背骨にかけてを切り裂く・・・」私は手を使って自分の胸に線を描き、反対側の腕の根元からみぞおちにかけてを示す。「このようにして彼は死ぬ。ワッコフはプロヴァーの腕の下から直接あなたを撃つ。《損害時のムーヴ》をやってくれ。2損害マイナス1損害だから、ロール+1だ」


彼女はロールでミスを出す。ロール+損害でミスするのは、PCにとって良いことなのを思い出して欲しい。私は、1損害を負わせるか、さもなくば損害時のムーヴの7-9リストから何かを選択するかを決める機会を得る。私は、彼女が掴んでいるものを離すという選択を行う。
「損害を書き込まなくてもいいよ」と私は言う。「代わりに、君がプロヴァーの肋骨からチェーンソーを引き抜こうとしているところで彼女が撃ってきたから、野球用のボールを胸に投げあてられたように感じた君は、持っていたものを離してしまう。プロヴァーの死体はチェーンソーが突き挟まった崩れ落ちる」私は【彼女の持ち物を奪う】。「どうする?」
「彼女の腕を引っ掴んで・・・」
「侵入用グローブで皮膚に触れようとするんだね?」私は、マリーが《危地で行動する》ことだと言いそうになるが、ギリギリのところでワッコフが[感銘を受け、狼狽し、怯えていた]ことを思い出す。「彼女は茫然とプロヴァーを見下ろすのみで、流血に塗れ、考えることすらできないようだ」と私は言う。
「おやまあ、じゃあ代わりに、彼女の顔に手を置くだけにしとく。とても優しげにね。《人形使いの繰り紐》を行うよ。『ワッコフ、眠りなさい』」彼女はロール+ウィアードを行うが、ダイスからは3しか得られず、彼女のウィアード+3を持ってしてもミスとなる。
「そのムーヴでミスしたら何が起こるんだっけ?」と私は言う。彼女はプレイブックを開いて覗き込む。
「無益な1損害を負わせる、とあるよ」


「それはワッコフに2損害目を与えるね」と私は言う。NPCにとって、2損害は通常致命的なもので、時には直ちに命に関わる。そして私は照準機越ごしに見る。「彼女はひどく不運にも脳卒中を起こす。君が触れたのは顔の左側だよね? だから、彼女の脳の左側でそれが起きたようだ。彼女の体の右側は力を失って崩れ落ちる。完全に、そして突然に。彼女は倒れる。プロヴァーの血がベットリとまとわりつく。彼女は話すことができないが怯えているように見える。顔の左側は怖くて堪らない形相だ。もし君が助けようとするなら、10分は生き延びられるだろうね。さもなくば死ぬよ」私は【起こりうる成り行きを告げ、尋ねている】。
「死なせてやるよ」
よしよし。プロヴァーを抹消、ワッコフを抹消、っと。キーラーのプレイヤーはしかめっ面をして頭を振っている。彼らは二人とも、彼女のギャング・メンバーだったからだ。
「チャーチ・ヘッドについてはどうする?」と私は言う。