断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Dread: The First Book of Pandemonium賛歌

 先日フリー化されたBooks of Pandemoniumの基本ルールをぱらぱらと読んでましたが、思った以上に素晴らしい代物です。
 そんなわけでほんの少し紹介を書いてみます。要点をざっと読みしたに過ぎないので、勘違いがあったらごめんなさい。

背景設定

 それはオクラホマのヘイウッドから始まった。州都から南東に130マイル離れた人口二千の小さな街で、一夜のうちに命ある人間が消え失せたのだ。うち2/3は酸鼻を極める無残な遺骸として発見され、残りは一切の手掛かりを残さず消え失せた。その後も世界各地で類似した虐殺が続く。血の月曜日と呼称された最初の一件に比べればずっと小規模であったが、いずれも残虐で超自然的な力を連想させる形での殺人だった。
 あなたは程なくしてその正体を知ることとなる。地上の生命の在りようからかけ離れた、異形の存在に襲われることによって。導師(Mentor)によって救われなければ、あなたも飛散極まりない犠牲者の列に名を連ねていたことだろう。導師は目前の怪物を打ち払うと、あなたに世界の真実を告げる。この世界と地獄との障壁がほんの僅かな時間消失したことが、血の月曜日を引き起こしたのだと。間隙を突いて自由を得た多数のデーモンが、今も世界各地で惨劇を引き起こしているのだ。
 謎めいた導師による訓練を受けたあなたは、並の人間を遙かに凌駕する能力を開花させる。やがて魔術の力をも身につけ、デーモンと戦う結社(Cabal)に属することになったあなたは門弟(Disciple)と呼ばれるようになった。似た境遇の仲間たちと共に、人々を守りデーモンを狩り出すこと。それこそが人生の目的となったのだ。


 Dreadは、この世界に入り込み人間を喰らう邪悪なデーモンとの戦いを中心としたRPGです。
 上記のように、一見すると宗教くさい基本設定ですが、内容は比較的プレーンな部類に入ると言えるでしょう。
 詳細はかなりあいまいです。デーモンの存在がいかほど流布しているかは卓ごとに話し合って決めるようガイドラインに記されていますし、導師が何者であるかという謎や、デーモンや地獄に関係した世界の構造といった、マニア心をくすぐる設定はざっくりカットされています。別売りのキャンペーンセッティングだと、やたらメカめかしいエンジェルも登場するようですが、基本的に押し潰されそう情報量とは距離を置いているスタンスです。GM項にある隠された世界設定もさほど凝ってません。
 要は、世界の真実を知ったものたちが、人知れず邪悪を狩り出す、という王道の設定なんですよね。好みで歴史的設定を当てはめたり(例えば大正末期の帝都東京で暗躍する妖怪を退治する伝奇ものとか)、別のテクスチャー(PCの立場を若干偏らせた『ナイト・ウィザード』とか、ジェダイの騎士とか)を張っても十分に機能することでしょう。


 では、何を念頭に置いて遊ぶのか。
 答えは非常にシンプルです。
 クールなキャラクターたちと邪悪なデーモンとの死闘。絵を思い浮かべるだけでも心躍る、そんな純粋な娯楽を存分に味わってください。

軽量なルール

 Dreadで用いるランダマイザーはD12です。
 PCは3つの特性(体力、判断力、精神力)と技能を持ち、判定はこれらと同数の12面体を振って、難易度以上の出目があれば成功というもの。もしも出目が被っていた場合は、その出目に被った個数を加えた値として扱います(例えば6の目が2個でていたら、6+2で8となる)。対抗判定はお互いに振り合って解決しますし、相手に与えるダメージは差分値が影響してきます。
 このようにDreadは伝統的なスタイルに則ったRPGです。
 とはいえシンプルな分、状況を描写するプレイヤーの語りに依存するところが少なくありません。そのため、プレイヤーのクールな情景描写には判定ボーナスが付きます。「相手を殴る」の代わりに「テーブルを飛び越えて飛びかかり、もつれ合って床に倒れるまでの間に、パンチを二発叩き込みます」なら振るダイスが1つ増えるのです。


 キャラクター作成は、特性・技能の割り振り、動機・コネの決定、装備品の購入、という手順が必要ですが、データ量は少ないのでさくさくできあがるはずです。ただ、魔術の数は充実しているので、ここで時間を食うかもしれません。一応お勧めセットが提示されてはいます。
 全てのPCは魔術を使用可能であり、3特性のどれか一つが超人的な域にまで高められています。これによって特典が得られるため、PCの役割分担はかなり明確化されることになります。
 また、各PCは12ポイントの激怒(Fury)というリソースを持っており、消費することでセッション展開を有利に進めることが可能です。

ディレクター

 DreadにおけるGMはディレクターと呼称されます。
 ディレクター項において、背景世界の秘密などはサラッと流されており、その大部分を占めるのはデーモンの設定です。
 単なる戦闘データに留まらず、外見描写や習性、人間を食い物にしていく方法が記載されており、様々なシチュエーションを考える苗床となるよう構成されています。全41種類でかなりの充実ぶり。
 シナリオ構築ガイドも完備されており、The Death Spiralという主要素を追跡しやすくしたチャートを用いて、調査パートと物語展開を管理する方法は、別のRPGにも応用できそう。調査系シナリオの作成メソッドとしても、一読の価値があると思います。
 全体的に隙無く充実したガイドといえましょう。

充実のシナリオ

http://rpg.drivethrustuff.com/product_info.php?products_id=61448
 こちらの無料セットは、5冊から構成されています。
 そして基本ルール以外全て、シナリオとネタの詰まったソース・ブックです。キャンペーン本などは有料ですが、それもまた安価なバンドルで提供されています。
 これほどの内容が無料提供されていることは正直驚きのひと言。


 ページ数に躊躇を覚えて敬遠されるかもしれませんが、ルールとキャラクター作成に必要なデータはそこまで多くありません。必要なところだけつまみ食いなさってくださいまし。
 興味を持たれれば是非ご一読を。
 遊びたいけど言葉の壁が・・・という方がおられましたら、僕がサマリー作ってもいいぐらい。それほど気に入ってしまいました。