断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

ごねてみたのが致命的

 セッションをサポートする話の番外編、というか失敗談です。プレイヤー側としては妥当な行動をしたつもりが、シナリオ自体を書き換えざる得なくなったという、笑い話。
 ちょっと前に参加したナイトウイザードのセッションでのことです。
 短時間枠(サークルの夜の部にて門限がある人のために設けられている)で、ナイトウィザードの世界設定は使わないという説明でした。ほのぼの現代ファンタジーな雰囲気で、PCたちは全員高校生。演劇部の倉庫を整理していたら、箱に閉じ込められた願いを叶えてくれるという霊的存在が女子高生NPCに憑依。PCたちの些細な願い事を一通り叶えた後「では代金として、この世界の石油を全ていただいて帰りますね」と無茶を言い始めます。ゲームマスターの想定は、PCたちが責任をとってこの霊的存在が隠れるダンジョンを探索する(同時に憑依されたNPCも助けに行く)、という考えだったようです。
 さて、プレイヤーたちにとっては代価を請求された時点で、そういった流れはだいたいみえています。しかし、素直に引き下がることはしませんでした。この展開に不条理なものを感じてしまうのは無理からぬ部分もあったし、私も含めて数人が食い下がります。
 曰く「まあ、待ってくださいよ。あなたの世界では些細な願いがこの世界の原油全てと同じ価値を持つように、世界によってものの価値というのは異なるのです。例えば、この地球では意志ある人に憑依して、本人の意志を蹂躙して操ることは原油全てどころではない対価を支払わせられる行為なんですよ!」「そう、命は地球より重いとされるのです!」相手に勝るとも劣らない無茶苦茶な理屈です。
 プレイヤーとしたら、少しでも譲歩を引き出せる可能性や、ゲームマスターに無茶な展開だと暗に指摘する程度の意図だったと思われます。ところがゲームマスターは思いの外公正で、少し考えた後「わかりました。この世界のことをもっと知らなくてはなりませんね」とNPCに言わせ、石油の強奪をあきらめたのです。PCの側があまりのあっけなさにぽかんとしてしまいました。
 その後は少し強引ながらも問題なく進み、結局全く別の理由と目的でダンジョンを探索する話になったのですが、GMの説明や状況がなにやらちぐはぐで、緊張感も低く間延びした感じになってしまいました。セッション終了後に聞いたら、元々の想定が判明した次第。憑依されたNPCがそのままさらわれる前提で、ダンジョンの仕掛けやイベントを考えていたため、それらが全て不発に終わり、アドリブで繋ぐ羽目に陥っていたそうです。つまり、プレイヤーは少しごねただけのつもりが、セッションにはクリティカルだったというわけですね。短時間枠とはいえ、ゲームマスター氏のがんばりには敬意を表します。お疲れ様でした。
 だからといって、プレイヤーの行動が間違っていたとは思えません。唯々諾々とゲームマスターの示した状況を受け入れるだけでは、TRPGとしての重要な楽しみを殺しているからです。どちらが正しいとは言えないし、適切な解答は存在しないのでしょう。笑い話にして、次回はよりよい方向に転がるよう願うのが精一杯の対応です。