断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

10/15の覚え書き

 今週から公式例会。
 1部のキャンペーンGMとして気が抜けない日々の始まりです。

1部

 自分がMCのApocalypse Worldキャンペーン、第一回。
 キャラクター作成と最初のセッションを平行させる形で行いました。
 今回の事前準備で注意したのは、作り込みすぎないようにすること。
 AWは、キャンペーンを通じて参加者全員で世界を作って行くスタイルです。MCの役割は、PCたちの後に従い、何が起きるのか見いだすこと。なので、背景世界の詳細や物語の方向性はその多くをプレイヤーに委ねる形式です。


 僕は背景設定とイメージとを、それなりに作り込むGMです。アドリブに頼るマスタリングを支えているのは、多少の逸脱は回収できるだけの土台イメージの形成なのです。
 だから、AWのキャンペーン・メソッドにある、細かな周辺環境、取り巻く諸勢力やNPC、キャンペーンの方向性、それら全てを「事前に想定しない」ように保っておくのは大変でした。そんなに多くをプレイヤーに任せて大丈夫なのか、という不安感がどんどんわき上がってくるのです。
 自分は、口先ではプレイヤー中心のセッションをプッシュしている割りに、内心ではそこまでプレイヤーの発想に信を寄せていないのだろうと、自覚できる準備期間でした。


 Apocalypse Worldに固定の背景世界はありません。
 そのため、基本的な世界の終末風景とスタート地点の情景はMCが準備します。
 今回は「万物から色が失われていく終末」「色の抜け落ちた物質が崩れ、白き沙漠となって世界を覆う」「人々は夜を主な活動時間として、旧地下街や地下鉄で灼熱の昼をやり過ごす」「人々は白化を恐怖し忌み嫌い、自分たちの生存拠点を多様な色の文明の残骸で飾り立てる」「文明の末期に大戦が起こり、残存兵器だけは充実」「PCたちの住処は、オアシスの辺に埋もれる軍艦で、白化して崩れゆく摩天楼がそれを見下ろす」あたりのイメージを基礎として準備。ちょっと欲張りすぎた気もします。
 これを元に、プレイブックからキャラクターのタイプを選んでもらい、だいたい固まったところで完全アドリブの第一セッション開始。それを通してキャラクターの性格や立ち位置を固め、終了後にキャラクター設定を書いてもらいました。
 また、キャンペーンに必ず組み込んで欲しい設定を「手掛かり」として各プレイヤー1つずつ提出してもらいました。これはプレイヤーのやりたいことを拾いきれるか不安だった僕が勝手に追加した項目であり、ルールブックにはありません。


 できあがったのは次の5PC。

パンドラ タイプ:タッチストーン 20代前半の女性
 世界が白化現象から救われる幻視を見て、砂に埋もれた戦艦からそれは始まると予知。その未来に希望を託し、この地にやってきた戦士。無用な争いや犠牲は避けたいというのが基本スタンスだが、目的のためのやむをえぬ犠牲は許容する。
ベガ少佐 タイプ:ハードホルダー 30ぐらいの男性
 SS軍服を身につけた、戦艦周辺の支配者。だがナチズムなどの思想は全く理解していない(そもそも知らない)。権力欲が強くサディスティックだが、同時に約束に厳しく気前のいい側面もある。
サンジバー・モナス タイプ:オペレーター 30前半の男性
 少数の仲間たちと裏の仕事に従事する。初期の専門分野は「強要」「潜入」「取引の仲介」。スリル中毒だが、自分の立てたシナリオ通りに事が運ぶのも楽しむ。表向きは信頼や地位のために働くが、底意の知れないところがある。
マダム・リリー タイプ:マエストロ・ディー 外見は20代前半の女性
 船内カジノの女主人。黒髪、黒のロングドレスに日本刀というファッションで、行方をくらました機械ギークの父親を探している。カジノの副次的な売りは「ジャズ音楽」と「麻薬」で当人もドラッグ中毒らしい。
ホワイティング タイプ:サヴィヘッド 10代半ばの男性
 沙漠で行方知れずになり、帰ってきたときには高い知識と技術を身につけていた少年。研究第一で好奇心も強い技術者。考え方は割と大人びている。姿を消していた間のことはおぼえておらず、それ以来髪は純白となった。

 なかなかにバリエーション豊かで、物語の種も随所に見られます。MCとしてはほっと一安心すると同時に、プレイヤーたちに多くを委ねる方針を貫こうと決意を新たにしました。


 第一セッションで起こったことは次の通り。

  • サンジバーは「取引の仲介」を用いて、マダム・リリーと旧地下街の冷酷な狩猟団のボスであるピュトリドと引き合わせる。彼女のカジノ支店を地下街に開こうという計画のためだ。話し合いの結果、カジノの売りの一つである麻薬を増産する必要があると判明する。
  • 話が概ねまとまったところで姿を現したのは、以前サンジバーが切り捨てた男ナード。彼は現在、ピュトリドの右腕に収まっているらしい。サンジバーは連れ去られそうになるが、マダム・リリーが機転を利かせ、贈り物をすることで事なきを得た。
  • その頃、パンドラは彼女の幻視を信じてくれた老人グロームと艦内で演説。その言葉は過激であり、ベガ少佐が部下を引き連れて登場する。ベガ少佐はグロームを射殺するよう部下に命じるが、パンドラが彼を庇い、銃弾が一つも当たらないという奇跡のような出来事を目の当たりに。
  • パンドラの実力を買ったベガ少佐は、彼女を部下として迎え入れることにする。彼は歓迎祝いを開くべく、地下のネズミ牧場を略奪すると宣言。部下40人と副官のドミノ、パンドラを従えて都市部の廃墟へと向かう。
  • 入れ違いに帰還したサンジバーとマダム・リリーは、ホワイティングに麻薬増産が可能か打診。このドラッグはある種の蠍の毒から抽出された成分を用いており、ホワイティングの研究室で飼育している数では到底足りないと判明する。そこでマダム・リリーは、ベガ少佐の留守を預かっていたマッドドッグと接触。カジノで多くの借りを作っていたこの男は、その棒引きを約されると、本来なら生存拠点を守るべき配下の大部分を引き連れて、沙漠で蠍集めを行う。
  • 一方ベガ少佐は、地下鉄跡地にある奴隷商人ノーベルの養ネズミ場を襲撃。奴隷たちや守りを圧倒して、ネズミ肉を略奪する。パンドラは争いをこれ以上拡大しないよう、地下鉄のダクトから単身ノーベルの元へと向かう。目的は彼を説得することだったが、到着したとき既に、彼は部下から報告を受けて部屋を出ようとしているところだった。仕方なく、パンドラはノーベルの頭部を打ち抜き殺害して、配下を説き伏せ降伏させる。
  • ノーベル一味は新たな代表として、クラリオンという女性を選び、ベガ少佐の配下に入ることを了承。クラリオンは運営に関する折衝を行うべくベガに同行すると告げる。乗り気では無かったベガだが、彼女の挑発的な言を受けて「ハーレムに加える」と宣言し彼女と略奪品(ネズミ肉)とともに、船へと帰還する。ロスチャイルドという名の男に後の管理を任せて。
  • ベガと配下が帰還する前に、船に残っていた3人は、蠍を即座にばらして当面の需要を賄うのでは無く、繁殖させられないかと考える。そこでサンジバーが手を回して、オアシスの周りで山羊を飼っている住民と取引して囲いをおかせてもらい、その中で蠍の養殖を行う運びとなった。
  • ベガ少佐は住民たちに生肉を振るまい、勝利を祝し、パンドラを歓迎する祝宴が開かれる。そんな中、アボンドという小男がベガ少佐に、マッドドッグが持ち場を離れていたことを告げ口。ベガ少佐は盛り上がる住民たちにクラリオンを引き渡し、「好きにしていい」と告げると、目立たぬようにマットドッグを連れて別室へ。厳重注意と拳骨をくれてやると同時に、蠍を捨ててくるように命ずる。そこにふらりと現れたホワイティングが、最初の取引内容も含めた事情を全て話し、即廃棄の線は消える。
  • ベガ少佐にとってクラリオンの件は、人々の注意を集めかつ彼女の心を折るためだったらしいが、当人はただただ恐怖して激しく抵抗。パンドラとサンジバーが彼女を助けに割って入る。パンドラは逆に取り押さえられるが、その隙にサンジバーはクラリオンを連れて難を逃れる。そこにベガ少佐が戻り、事態は沈静化。ドミノはサンジバーとクラリオンの追っ手として志願するが、サディストな彼女に任せると二人の身に危険が及ぶと判断したパンドラが割って入り、結局二人に手勢を分けて先に見つけた方が好きにしていいという裁定がベガ少佐から下される。
  • サンジバーはクラリオンと共に、山羊の飼手たちの倉庫に身を潜めていた。彼はクラリオンがノーベルの娘であったことを知り、彼女からノーベルのコネクションに関する情報を聞き出す。逃がす手助けを梃子としての約束だったが、実のところそのコネの話さえ聞ければ彼女がどうなろうと知ったことでは無かった。
  • パンドラは予知の力を用いて、二人の居場所を感知。ドミノはマダム・リリーに食ってかかり、荒事になりかけるが、ベガ少佐が仲裁。リリーの人脈と影響力を駆使して、二人を連れてこさせようとする。サンジバーは用済みとなったクラリオンをパンドラに引き渡し、そこにマダムからの使いが来て、全員がカジノに集結。
  • 怯えきっているクラリオンを捨て置けなかったパンドラは、自分が彼女を保護するので、ベガ少佐のハーレムには入れないように頼み、ベガ少佐はそれを了承。そうして一夜の騒ぎが収まったところで、無情なる太陽が沙漠に顔を覗かせるのであった。


 完全アドリブで2時間に収まったセッションの割りには、それなりに起伏もあり、多くの物語の種が植えられた、なかなか充実した内容になったのではないかと思われます。
 次回よりフロントを準備してのセッション開始。さて、物語はどのように発展するのでしょうか?

2部

 4回YさんGMのシノビガミ怪。
 封印が解けつつある妖怪・虚(うつろ)を巡り、封じてきた二人の巫女に仕えるものそれぞれ一人、虚の眷属である妖怪・空(うろ)に従い封印の解除を目指すもの、空を狩り出すもの、の4人の忍がPC。
 うち二人は比較的普通のシノビだったのですが、残りがドリルカレー怪人と流星男爵という、一緒にいたら次元断絶を起こしそうな組み合わせとなりました。
 再利用の可能性もあるので詳細は伏せますが、最後の3サイクル目で、全員勝利を目指すか犠牲を出すかで、メタ議論モードに突入。見えない情報を推測しての駆け引きは醍醐味の一つと言えますが、さすがに今回は長かった。反省あるのみです。
 セッションは綺麗にまとまり、ネタも、秘密の割り振りもかなり面白かったですよ。

その後

 3部回避して逃亡しました!
 喉が治りきってなかったので・・・。