断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

祭祀長の章

 拙い訳で恐縮ですが、Apocalypse Worldの「The Master of Ceremonies」章の重要部分を、ざっと訳してみました。
 108-121ページにあたり、MCのムーヴの実例部分は省略しております。
 Apocalypse WorldではGMのことを、MCと呼びます。かなり細かく「何をすべきで、何をしてはならない」のか規定されており、一般的なGMとは感覚が異なるから、名称をいじったのかもしれません。


 いずれにせよApWに限らず、フィクションを重視し、物語をプレイヤーに委ねるスタイルのマスタリングを行うに当たって、参考になることがいろいろ書かれております。
 興味を持たれたのなら、是非購入して遊んでみてください。手軽にPDF版のみ購入できますよ。


Apocalypse World


The Master of Ceremonies


 MCとはApocalypse WorldのGMであるあなたのことです。


 ゲームをGMするための方法は数限りなくありますが、特に一つの方法をApocalypse Worldでは要求します。この章がそれにあたります。これらに続くのはルールです。残りのゲーム全体は、この上に構築されています。


●なされるべきこと

  • Apocalypse Worldをリアルに見えるよう心がける
  • プレイヤー・キャラクターの人生を退屈なものにしない
  • 何が起きるのかを見いだすべくプレイする


 あなたの口にすることは全て、他でもないこれら三つを成し遂げるためすべきことです。例えば、プレイヤーを負かしたり、望むことを拒否したり、罰したり、コントロールしたり、事前設計済みのストーリーラインを貫徹させようとしたり、するのはなされるべきことではありません(ストーリーラインを事前設計してはいけません。本気ですよ)。PCを板挟みや行き止まりに追い込むことや、足下の絨毯をぐいと引っ張ることは、あなたの仕事ではないのです。プレイヤーの誰かを追いかけることで、退屈なゲームを終わらせましょう。Apocalypse Worldを不自然に見せてしまい、何が起きるのかを見いだそうとプレイせずに、事前決定されたことしか起きない、そんなゲームを。


 見いだすためにプレイしましょう。Apocalypse WorldをMCするために必要な、あてになる規則が存在します。PCたちによって駆動する、ゲームにおけるフィクションが持つ内なる論理と因果性に、自らを委ねなくてはなりません。何が起こるかに注意を傾けるべく、自らを開かなくてはならないのです。しかし、何が起きたのか告げる時がきたのなら、自分の希望は脇へ置かなくてはなりません。


 MCすることの報酬は、GMすることのそれと似ており、規則に従うことで訪れます。真に注意を払う何かを見つけたのなら、ゲームのフィクションがそれをユニークで確かなものとするようさせてください。つまりこれから何が起こるのか見いだしたいと切望する問い、などを見つけたのならば。


●常に口にすること

  • 原則が要求すること
  • ルールが要求すること
  • 準備が要求すること
  • 率直さが要求すること


 Apocalypse Worldは対話を、厳格かつとても伝統的なやり方で分類します。プレイヤーの仕事は、彼らのキャラクターが口にすることと着手する行動を述べることです(優先的かつ独占的)。彼らのキャラクターが考え、感じていること、思い起こしたことを言います(独占的)。そして、PCの人生と周囲の環境に関するMCの質問に答えるのです。MCとしての仕事は、その他の全てについて述べることです。世界についての全てのこと、そして呪われた世界全体で、PCを除いた全ての人が口にすることと、その行いを。


 常に良心的で、さらに気前よく、誠実でいましょう。プレイヤーたちは、実際に利用できる本物の情報を与えるGMをあてにしています。PCの周辺状況と、いつどこで何が起きているのか、といったことに関する情報を。ゲームのルールについても同じです。正直に隠し事なくプレイしてください。プレイヤーは、自身のムーヴ、ロール、キャラクターの強みとリソースによって最大限の利益をうける権利があるのです。ごまかしたり、欺いたり、引っかけたりしてはなりません。


 もしプレイヤーの敵手としてゲームをプレイするならば、MCの意志決定への信頼性と、ルールの不注意な誤りは、利害衝突を引き起こすでしょう。プレイヤーに敵対するのではなく、彼らと共にゲームをプレイしてください。


●原則

  • 内なる終末情景を吐き出す
  • プレイヤーではなく、キャラクターに話しかける
  • MCのムーヴを行うが、誤解を抱かせる
  • MCのムーヴを行うが、その名称は口にしない
  • 照準機を通して眺める
  • 全員に名前を与え、全員を人間らしくする
  • 誘発的な問いを投げかけ、答えを元に世界を広げる
  • もてあそびか断続的な報酬を伴う応答
  • プレイヤー・キャラクターのファンになる
  • 画面外の出来事も考える
  • 時に意志決定を拒否する


【内なる終末情景を吐き出す】
 過酷な地相、けばけばしく血なまぐさいイメージ、並べ連ねられたグロテスクなどに没頭して、想像を育んでください。Apocalypse Worldでは、トナーのような塵で真っ黒な雨が降り注ぎ、それを吸い上げた植物の葉は灰色に染まっています。破損した車の列の間では、野良犬が縄張りを巡って互いあるいは鼠と争い、群れの一匹は保護的な骨でできた内瞼を発達させています。もしも、本当に近くまで寄れば、まばたきの際にカチカチという音が聞こえるでしょう。


【プレイヤーではなく、キャラクターに話しかける】
 「マリー、今朝はどこにいるんだい?」であって「ジュリア、マリーは今朝どこにいるんだろう?」ではありません。「女性が近づいてきた。彼女の名はペルトといい、家族を取り返すことを切望しているんだ。彼女のありようは、みたらすぐにわかるよ。」これでは、PCがペルトを見知っていることになってしまいます。プレイヤーに直接説明しないでください。


【MCのムーヴを行うが、誤解を抱かせる】
 もちろん本当の理由は、実世界に起こりうることからムーヴを選択するからです。誰かが自分のキャラクターをどこか新しい場所に向かわせ、誰かがロールでミスをして、誰かがロールでヒットしてMCの答えを求め・・・みんなMCが何か述べるのに注目します。だからMCは行うムーヴを選択するのです。実世界の理にあわせて。しかしながら、誤解させてください。内側のゲームのフィクションに代えて、MCの行うムーヴ全てが世の理に沿っているように見せかけることによって。例えば、MCのムーヴが「彼らを別つ」だったとするなら、決して「ロールにミスしたから、君たち二人は離ればなれになった。」と述べてはいけません。代わりに「君は彼の銃をひったくろうとした(これはPCのムーヴ)。しかし、彼は君を蹴り倒す。彼らが君を踏みつけている間に、ダムソンが引きずり去られた。」ではどうでしょうか。結果は同じで、彼らは別たれましたが、抜け目なく原因を誤って伝えることができました。MC自身のためにムーヴを選択することを、ゲームのフィクションであるかのように見せましょう。そうすることで、ゲームのフィクションが起こしうるムーヴを選択することと、常に一致するのです。


【MCのムーヴを行うが、その名称は口にしない】
 MCのムーヴが「彼らを別つ」だったなら、決してそのままを告げてはなりません。代わりに、フォスターのちんぴらがどのようにして彼らの一人を引きずり去るか語りましょう。そして、フォスターは他のものを昼食に招待するのです。MCのムーヴは「不吉な兆しを告げる」かもしれませんが、どうか「不吉な兆し」という言葉を口にしないでください。代わりに、今朝がいかに、不快で、廃車置き場のどこかから立ち上る黒い煙が悪臭を放ち、「向こう側で何が醸造されているのか訝しく思わないかね?」、などと述べましょう。


 これら二つの原則は、理由と効果です。真相は、MCがムーヴを選択して、それを行っているのです。フィクションが原因のように見せかけてください。それがフィクションの効果を持つように見せかけるのです。


 これら二つの原則の目的は共に、プレイヤーに対する幻覚を作り上げることです。MCの意図を隠すためではありません。もちろん、NPCの行動あるいはPCたちを取り巻く情勢をPCから隠蔽するのは厳禁です! ダメです。常に率直さが要求する通りに述べてください。PCの周辺で何かが起きようとしているとき、常に出来る限り正直でいましょう。


 MCのムーヴはPCのムーヴと全く異なるのです。しばらく後に、MCのムーヴを一覧にして、どのように選択するのかみていくこととしましょう。


【照準機を通して眺める】
 MCの注意が、MCの手にある誰かあるいは何か(NPC、目立つ地相、物質、社会など)に注がれるたびに、まずは検討してみてください。それを殺す、引きずり下ろす、焼き尽くす、吹き飛ばす、あるいは毒まみれの地面に埋める、などを。個別のNPC、派閥に属するNPC、NPC間の取り決め、完全に敵対している支配域とそこのNPCウォーロードに照準を合わせましょう。ゲームのスローガンの一つは「Apocalypse Worldに現状維持はない」です。MCは思慮の浅いプレイヤーに、取り決めや慣習には当てにできるものもあると思わせるよう仕向けてもかまいません。しかし、MC自身にとっては、その手の中にあるものは全て、最優先で常にある、そして抗しがたいターゲットなのです。


【全員に名前を与え、全員を人間らしくする】
 リアルに見えるNPCを作るための最初の一歩は、名前を付けることです。ふさわしいNPCの名前リストが第一セッション・ワークシートに載っています。プレイブックからも、使われていない名前を自由にあさってください。たとえひと言の台詞や、一回の意味ありげなスクリーン上での行動を得るに過ぎなくても、全てのNPCには名前を与えるべきです。


 NPCに分かりやすくふさわしい私欲を与えることによって、彼らを人間らしくしましょう。私のお気に入りNPCの一人であるロアークを引用してみましょう。ロアークは隣接した支配域を全焼させて帰ってきます。私たち全員の上に混沌を解き放ちつつも、彼は晴れやかです。なぜなら、彼は全くもって込み入っていないからです。彼は焼き払いたかったからそれを実行して、今や全身煤まみれだから泡風呂に入りたいと望む。それが首尾一貫した彼の振る舞いです。ゲームにおいて、全てのNPCを複雑にならないあたりで留めてください。彼らはなしたいことをなし、望むときに行い、何かが行く手を遮るなら、今やそれに対処するのです。彼らが人生でなすことは、自身の器官の活動に従ったものなのです。鼻、胃袋、心臓、性器、はらわた、耳、内なる子供、視覚などに。


 次に、PC-NPC-PCのトライアングルを作り出すことができます。NPCをいっそう人間らしくするのです。必ず彼らの複雑ではない私欲を、グループとしてではなく、個別のPCに関係するように計らうだけでいいのです。異なるPCに対して、NPCの個性の異なる側面を示してください。ロアークは野心家のマリーを愛していますが、人々を本来の場所に留めたいと望むアンクルのために働いています。ロアークは自慢話のためならアンクルのもとへ、うぬぼれたいのならビッシュのもとへ、泡風呂のためならマリーのもとへ向かいます。フォスターはアンクルを引きずり下ろし、支配域を奪おうとしています。しかし他のみんな−ビッシュ、マリー、ダムソン、デューン−には自分の支配のもとに留まって欲しいと望みます。これらはトライアングルの一種であり、PCたちに話し合うための材料を与えます。


【誘発的な問いを投げかけ、答えを元に世界を広げる】
 シンプルなものから始めましょう。「あなたの居住空間はどんな具合ですか?」「互いに知り合って最も長いのはだれでしょう?」のような。しかしプレイが進むに従い、身近で個人的なPC経験の詳細を尋ねてください。プレイテストにおいて、マイケルが自分のために誘発質問リストを作りました。「感触、音、物品の詳細、思考、心構え、匂い、欲求、いらだち、見た目(テクスチャー)、視界に入るもの、関係、味わい、場所の詳細」がそれです。それらによって彼は次のような質問を行いました。「何故、君たち二人だけが戦車のキャビンに馴染むことができるのだろう?」「テント街の住人は、君をどんな気分にさせたんだい?」「手のひらの下にある彼女の唇は、どんな感触だろうね?」非常に優れたやり方です。


 ひとたびプレイヤーの答えを得たのなら、それをもとに世界を広げていってください。それによって三つの結果が生まれます。(1)MC自身の詳細とイメージを加えることによって、終末情景を上積み。(2)後のプレイでそのことを引き合いに出し、現状に投げ返す。(3)その情報をMC自身の終末情景の感覚を発展させることに用いる。答えと、もっと重要なその含意を、MC自身のヴィジョンに混ぜ込むのだ。


 とりわけ重要な問いは、各PCが初めて心霊の大渦に心の目を開いたときのものです。PCにとってはどのようなものでしょうか。他のPCと同じかもしれませんし、異なるかもしれません。それ以降は、常に、常にMC自身の子細を加えてください。


【もてあそびか断続的な報酬を伴う応答】
 誰かの回答の上に、MCが終末情景を覆い被せるときは、常にもてあそぶようにしてください。こんな例はどうでしょう?


 マリーは、ロアークが誰を殺そうとも気にかけないが、彼がジョーの娘(NPC)を生きたまま連れてくるよう、非常に明確に仕向けました。疑問をぶつける、あるいは尋問するなどのために、マリーはジョーの娘の生ける脳に侵入することを望んでいるのです。だからロアークは出かけて、住民の集まりを殺害し、ジョーの娘を生きたまま連れて帰ります。けれど、ここがもてあそびを挟み込む箇所であり、彼は彼女を手酷くぶちのめしてしたこととなります。マリーは常のように彼女の脳に入り込めはしますが、彼女は昏睡状態に陥り、背骨は折れ、顔は砕かれています。ジョーの娘は今や生きてはいますが、見事なほどに取り返しがつかない有様です。マリーが成し遂げようとしたことをもたらしはしましたが、本当に彼女が望んだ形ではありません。おわかりでしょうか? 変化球を投げるのです。MCが触れるもの全てに、その血塗れの指紋を残すようにするのです。


 とはいえ、断続的に都合よく、PCの一人が望んだことそのものをもたらしてください。ことによると、望みを少しは上回る結果を。ほどよくおこない、プレイヤーが予期しているときは行わないようにすれば、彼らは常に、今回は成就するんじゃないかと期待することでしょう。三回に一度、あるいは二回に一度ぐらいの頻度でしょうか? まれではありませんが、予測不能にしてください。


【プレイヤー・キャラクターのファンになる】
 「PCの人生を退屈なものにしない」は「常に悪い方向に向かう」ということを意味しません。もちろん、時々は悪化するでしょうけれど。常に、でしょうか? 絶対に違います。


 PCの人生を興味深いものにする最悪の方法は、キャラクターをまず第一にクールにしているものを取りあげてしまうことです。ガンラガーの銃器、さらにガンラガーの古い写真のコレクション・・・これらはPCを私たちの期待に一致させるようにして、PCをその上へと押し上げさえするものです。そういったものを取りあげてしまわないでください。


 もう一つの最悪の方法は、PCが闘争して勝利した時の成功を、拒絶することです。PCが望むことは常にもたらしましょう! キャラクターの成功を興味深いものにする方法は、そのようなものではなく、成功を重大なものにすることです。PCが何かをやり遂げれば、全てのNPCに反応を起こさせるのです。先に作り上げたPC-NPC-PCトライアングルを再評価してください。誰かの見解が変化するでしょうか? 敵であったものが今や恐れを抱いていたり、敵であったものが今や好ましくうつって同盟者とする好機であったり、しないでしょうか? PCの成功を、外へと向かううねりとしてください。それらが、既に不安定だった状況をぐらつかせるよう仕向けるのです。Apocalypse Worldに現状維持はないのです! 人生でさえ、常に最悪というわけではありません。


 「好みの過酷で直接的なムーヴを行う」はそのままの意味です。望み通り過酷で直接的ものにしてください。とはいえ「考え得る最悪のムーヴ」とは言ってません。Apocalypse Worldは既にPCに襲いかかろうと躍起になっています。ゲームのルールも同様です。もしMCが同じように、彼らに襲いかかろうと躍起になるならば、彼らは徹底的になぶられるでしょう。


 能力のハイライトも同様です。MCがPCの能力をハイライトするとき、キャラクターを誇示するものを選ぶようにしてください。頻繁に入れ替えて・・・単に最も低い能力を選んでそこに固定しないためにも・・・PCがいつも少なくとも一つは高い能力がハイライトされているようにしてみてください。


【画面外の出来事も考える】
 ムーヴを行うときには、多種多様なNPCがその間にどのような行いを必要としているのか想像してください。彼らのうちの誰かが画面の外で為した何かが、今や明るみにでることはないでしょうか? PCには気づかれないままに、画面の外で何かを行っている彼らのうちの誰かは、 MCの静かな警告を受け取るに価するのでしょうか? これはApocalypse Worldをリアルに見せる部分です・・・そして、もしMCがフロントに注意を払うなら、それはPCの人生を退屈なものにしない部分となるでしょう。


【時に意志決定を拒否する】
 何が起きるのか見いだそうとプレイするために、MCは時に意志決定を見逃す必要があるかもしれません。MCの個人的な気まぐれや意志による決定が好ましくない事態が発生したときはいつでも、行わないようにしてください。ゲームはMCが義務を拒否するのに利用できる、4つの鍵となるツールを与えてくれます。「それをNPCの手に委ねる」「それをプレイヤーの手に委ねる」「カウントダウンを作成する」「それを賭けられた質問にする」ことがMCにはできるのです。


 MCは(1)それをNPCの手に委ねることができます。ちょっと自分自身に尋ねてみてください。この周辺状況のなか、バーディは本当に彼女を殺すことができるでしょうか? もし、答えがイエスなら、彼女は死にます。もし、ノーなら、彼女は生きています。そう、これは決定をMCの手に委ねていますが、誠実にそれをなす方法をもたらしてくれるのです。


 MCは(2)それをプレイヤーの手に委ねることができます。例えば「ダウが撃たれた、しかも、彼女は身を震わしてショック状態に陥りつつある。どうするの?」という具合です。もし、PCが彼女を助けるなら、彼女は生きるでしょう。もし、PCがそうしないかできないのなら、彼女は死ぬでしょう。望むなら、周辺環境にちょうど適するように、MCはそのためのカスタム・ムーヴを作ることだってできます。151ページの『ムーヴの雪合戦』章と、267ページの『さらなるもてあそび』章をご覧ください。


 MCは(3)カウントダウンを作成することができます。143ページの『フロント』章にあるカウントダウン項をご覧ください。手早くカウントダウン時計に概要を書き加えるだけです。9時に「彼女は負傷する」、12時に「彼女は死ぬ」と書き込んでください。時が刻まれるに従って彼女は危険に陥ることとなります。もし、彼女が火線に曝されたのなら、9時に飛びます。このやり方は、MCの手に委ねてはいますが、MCの気まぐれに委ねるのではなく、MCに熟慮と具体的な手順を与えてくれます。


 MCは(4)それを賭けられた質問にすることができます。145ページの『フロント』章にある賭けられたもの項をご覧ください。「ダウはこれを全て切り抜けて、生き残ることができるのか?」と質問を設定します。今やMCは、自身に自らは決して答えを出さないと約束したのです。イエスかノーか、彼女が生きるか死ぬか、という問いに対して。それがやってきたときはいつでも、NPC、PC、ゲームのムーヴ、あるいはカウントダウンを通じて、インチキせずに答えをもたらさなくてはなりません。


 だれかが向き直ってMCに注意を向けながら何かを口にするときは、常に原則が求めることを述べてください。


●MCのムーヴ

  • 彼らを別つ
  • 誰かを捕らえる
  • 誰かを困った状況に置く
  • 負傷を交換する(確定した形で)
  • 画面外の不穏な事態を告げる
  • 不吉な兆しを告げる
  • 負傷を与える(確定した形で)
  • 彼らの持ち物を奪取する
  • 彼らに購入させる
  • 持ち物のマイナス面を顕在化する
  • ありうる成り行きを告げて尋ねる
  • 代償を伴う、あるいは伴わない機会を提供する
  • 彼らの用いたムーヴを、彼らに向ける
  • 脅威のムーヴ を行う(フロントの1つからもたらされる)


 対話が中断し、みんなMCが何を口にするか注目している時はいつでも、これらから一つを選んで告げてください。それらは技術用語や専門用語ではありません。例えば「不吉な兆しを告げる」は、おそらく未来に起こるだろうよくない出来事を考えて、それを暗示することを意味します。「購入させる」は、彼らが求めるものは何か?、それを得ることができるなら彼らはMCの語ることに注目するのか?、と考えることを示し、もし彼らが求めるなら、彼らは購入せねばならないということです。こんなふうに処理してください。


 次に「どうするの?」と聞きます。


 原則を思い起こしてください。キャラクターに話しかけることを、誤解を抱かせることを、ムーヴの名称を告げないことを、思い出すのです。彼らのリアルな世界で発生したことを通して、何が起きているのかキャラクターに告げるのです。


 ムーヴを選択するためのガイダンスは次の通りです。


 ゲームのフィクションで進行している出来事に論理的に従うであろう事柄を、ムーヴとして常に選択してください。一つに限る必要や、最もありそうなものにする必要はありませんが、少なくともある種の道理にかなったものにしましょう。


 概して、MCのムーヴは次のようにすべく、自ら制限してください。(a)将来の過酷なムーヴのための準備、(b)PCに行動か反応の機会を与えるもの。アクションを開始するのであって、終結させるものではないのです。


 しかしながら、PCが申し分のない機会を金の皿にのせてMCに手渡したのなら、好みの過酷で直接的なムーヴを行ってください。巧みなものや優れたものでなくても、ほどほどでたいていは十分です。最良は、取り返しのつかないようにすることです。


 PCがムーヴを行いプレイヤーがロールでミスを出したときが、好機が皿にのせられていることを表す、最もフェアではっきりした例です。MCが準備し終えたなにかが妨害されることなく到来したなら、それも皿にのせられた機会とみなします。


 しかし、繰り返しになりますが、PCがMCに好機を手渡さない限り、NPCとPCのために、将来のムーヴの準備するよう自らに制限を加えてください。


(実例部分は省略)


●ルールと準備
 ゲームのルールはMCに言うべき事を教えます。例えば、PCが誰かに対して喧嘩腰になって、プレイヤーが7-9をロールしたのなら、ルールはMCに選択するべき項目のリストを与えます。そこから一つ選びんでください。それこそがあなたが言うべきことです。常に原則に一致することを口にしましょう。例えば、[あなたの進路から急いで逃げ去る]なら「彼女は薄汚れた水路に飛び込み、肘クロールで泳ぎ去ったよ」ですし、[あなたが求めていると、彼らが考える何かを与える]ならば「彼女は暗視ゴーグルをあなたの前に置いた。『これでいいだろ。あんたがそこまでこれに執着しているとは思わなかったんだよ』と言う。『けど、今夜突破しちゃいけないよ。クソッタレ、神に誓って、だ。』」


 フロントもまた、MCに言うべきことを教えます。例えば、PCが心霊の大渦に心の目を開くときは、ルールはMCに何か興味深いことを明らかにするよう教えているかもしれません。何か興味深いこと? フロントに目をやると、ジョーの娘が水のカルトに加わっており、PCたちはまだそのことを知らないはずです。だからそれを告げます。もちろん原則に一致した言い回しで。こんな感じでどうでしょう「脳が吠え猛る底深く、もの音が聞こえる・・・詠唱だろうか? 人名のリストが、百にも及ばんとする潜在意識の声で、繰り返し繰り返し唱えられている。『タムタム、ナーリー、フリース、ララ、フォーナー、ジョーの娘、シャン、、、』」(プレイヤー:「まてよ、ジョーの娘だって? ちきしょう、なんてこった!」)