断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

アドリブは万能にあらず

 ストーリー系のRPGは、一般的なRPGに比べてシナリオ作成の労力が低い。
 自分はそのような感触を抱いています。
 バランスのとれたデータ作成や、準備した道筋にプレイヤーを誘導する手順、状況設定の詳細や分岐を考える手間などが省略できるからです。
 これらのシステムは、GMが用意したシチュエーションの中で、プレイヤーあるいはPCが望むことを汲み取り、動的にセッションを構築することを目的とします。結果、シナリオの進捗に気をもんだり、スリリングな戦闘を配置するプレッシャーから解放されることでしょう。


 誰もがそのようなハンドリングをこなせるのか?
 例えば高いアドリブ能力が必須なのではないか?
 そんな印象を抱かれるかもしれません。
 たしかにアドリブ力は有用です。ですが、必要不可欠な要素ではありません。
 大切なのはプレイヤーから話を引き出し、きちんと聞くことです。
 GMによる過剰な描写は、時としてプレイヤーたちの想像の芽を摘み取ってしまいます。下手に口が回ると、プレイヤーの発言を遮ってGMが話し出してしまい、彼らのアイデアを阻害する危険すらあるからです。
#自分もよくやっちまいます。反省。
 経験上、寡黙すれすれのGM相手の方がプレイヤーはよく喋る傾向が見られる、と思います。最低限の描写のみで口をつぐめば、プレイヤーたちは「〜はどんな様子なの?」と尋ねることでしょう。
 注意深く耳を澄ませてください。
 そこには、彼らが何をしようとしているのか、何に興味を持っているのか、そんな手がかりに満ちています。例えば牢屋に閉じこめられたという状況を提示すれば、プレイヤーは「壁の材質」「窓の有無」「見張りの様子」などを質問してくることでしょう。投げかけられた言葉は、プレイヤーがどのような脱出手段を考えているかという手がかりです。キャラクターの能力や性格に見合った状況を投げ返すことで、行動を引き出すことが可能となるでしょう。


 では、欠くことの叶わぬファクターとは何でしょうか。
 それは参加者間の信頼です。
 一般的なRPGでももちろん信頼は大切です。しかし、メインストリームのシステムのいくつかは、多少ぎくしゃくしてもルールに沿って運用することでセッションが進行するような工夫が施されています。
 ほとんどのストーリーを主眼とするRPGには、こういった保険が存在しません。
 なのでお互いにレッテル張りを行わず、少なくともセッションの間はかりそめであってもかまわないので、相手を信頼するよう心がけてください。はなっから色眼鏡で見てしまっては、場の空気が悪くなるばかりでなく、相手がセッションにもたらそうとしているすばらしい要素を見逃してしまうかもしれません。
 それは時間を共有してる参加者全員の損失です。
 もったいないことこの上ないと言えましょう。