断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

3つ(GM/プレイヤー/キャラクター)の物語

 RPGにおけるストーリーとゲームの相関について、何度か記事を書こうと試みているのですが、的確と思えないのでボツらせている状態です。
 なのでいったん、自分のベースを見直してみることにします。
 自分がどのようなプレイスタイルを好むか、どこまでを許容するサークル文化に属しているのか。それを書き出すことで、自分の縄張りとしているRPGの領域を示し、ストーリーとゲームの範囲を整理しようとするわけです。


 では、先週のアリアンロッドにおける、自PCの行動を取りあげます。
 覚え書きでは自分の失敗を強調していますが、新人さんへの配慮を除けばそこそこに周りを楽しませて、自分のスタイルにもあった遊び方ができたと思うので。
#その一番重要な部分に瑕疵があったことこそ問題なのだけれど
 このセッション内で、自分はGMの意表を突く行動提案を4回行いました。
 そのうちの一回をここでは掘り下げてみます。


 セッションの基本ラインは、「ユニコーンの角が通常時の10倍以上で闇市場に出回っている。この国の法では本来、自然死した個体から切り取ることしか認められていないはずなのに。姫君の意向を受けた貴族からの依頼で、PCたちは調査を開始する。魔術師ギルドが運営する闇市に潜り込んで密売人と接触を持ったPCたちは、角がとある辺境の村からもたらされていることを知る。現地に赴いたところ、村の周辺は土壌が貧しく、貧困にあえぐ地域であった。村に隣接する森の中にユニコーンが暮らすと知った目敏い商人が、開墾を支援する資金を供出して森を切り倒させ、怒りに燃えて村を襲うユニコーンを村人と共に狩っていたのだ。商人は私利私欲のためというより、村と人々への愛着を持ち、ユニコーンの角資金を産業育成の基盤として活用しようとしている。PCたちは任務に従うのか、それとも村人の側に立つのか?」という感じ。


 GM曰く「現実の第三世界に暮らし、赤貧のただ中にいる人々への援助よりも、その地に生息する希少動物保護に熱心な西側世界の人々をモチーフにした」だそうです。
 どうりで、キャラクター作成時に「この世界ではユニコーンってどれぐらい希少なんですか?」と質問を受けて「えーっと、ゴリラとかそんなレベルかな」とGMが回答するわけです。
 なお、構造はとてもシンプルですが、1部セッションに収めるという時間の都合によるものがあります。


 実際のプレイにおいて、PCたちは手がかりを追って辺境の村までたどり着き、ユニコーン密売の張本人である商人に接触します(PCが粘って情報を集めたため、直接接触できる手がかりが手に入っていた)。
 相手が言い繕うため、自分たちも密猟のうまい汁を吸わせろとの物言いで、引っかけて言質を取ろうとします。
 そこに村人が駆け込んできて、別方向からユニコーンが二匹ずつ村に襲いかかろうとしていることを告げます。放置しておけば村人が犠牲になるとも。
 商人は、村人を助けるために片側を自分が受け持つので、もう片側を倒して欲しいとPCたちに頼みます。
 この時点では、推測(森を切り開いたことにユニコーンが激怒して村人に報復している)はたてられても、まだ断定に至るだけの情報は集まっていません。
 ここでユニコーンとの遭遇戦を行わせいったん村人を助けさせた上で、事情を知らせ、どちらの側につくか選択。その後、最終戦闘(ユニコーンの側につくなら対商人+村人、村人の側につくなら貴族の送ったお目付役)へとつなげる。GMの思惑はそのあたりだったと推測されます。


 そこで「じゃあ、彼がユニコーンを迎撃するため外へ出るなら、自分たちも反対側へと向かう振りをして、すぐさまとって返すのはどうでしょうね? ユニコーンと戦っている商人を後ろから襲って、挟み撃ちにできますよ。」と僕が提案。
 ギルド・リーダー役の新人さんの判断を挟んで、結局この案が採用されます。


 注意していただきたいのは、僕は別にゲーム的な有利さからこのような発案をしたわけではないことです。
 他のプレイヤーに対しては、戦闘時のリスクを軽減することをニンジンに、自分の望む方向へと導こうとはしています。
 しかし、このアイデアは物語をプレイヤーの望む方向へと動かすために、そしてキャラクター設定に従うがために出てきたものであり、アドバンテージは二の次だったのです。
#実際、GMの機転により、この行動は大した優位さを得られませんでした
#後ろからやって来たユニコーンと、商人に協力する村人とに挟まれ、
#PCたちは少し苦労する羽目に陥ります
#それがそのまま最終戦闘となり、セッションは短縮されました


 まず、ひとつ目の「物語をプレイヤーの望む方向へと動かすため」から説明します。
 ここまでの展開から、ベストの解決手段は「PCたちが村人とユニコーンを仲介する」ことではないかと推測していました。GMがその道を準備しているかはわかりませんが、どちらかが抑圧される未来よりは、物語を調和へと導くのが最良と考えた次第です。
 では、もしここで成り行きからユニコーンを殺害したらどうなるのか?
 最悪、双方に憎まれつつ解決役を買って出る羽目に陥るのではないだろうか。興味深い葛藤を引き起こす可能性はあるが、それよりは和解の可能性を残した方が、自分の望む物語には望ましい。
 であるなら、ユニコーンを傷つけず、かつ密輸に携わっている者をとらえるに最適な手段は・・・そこから先の案に繋がるわけです。


 ふたつ目は「キャラクターの設定に従うがため」です。
 うちのPCはアコライト/サモナー(MPが増強された、ダメージ軽減&治癒役)であり、ライフパスは一発振りで「始祖の紋章(神の恩寵を受けている)」と「饑餓(満たされることのない渇望に苛まれている)」でした。
 それらを結びつけて考えたPC設定は「神の祝福を受けたものとして生まれ、森の奥深くにある神殿にて、生涯神に仕えるために育てられる。だが、幼き日に瀕死の深傷を負い神殿へと保護を求めた男の最後の数日を世話をした際、彼から外に広がる美しい世界について多くを教えられる。その幻影を追い求めるように、成人の儀式を受ける前夜に神殿と森を後にする。残念ながら外の世界には、話を聞いたその日から心に培ってきたような美は存在しなかった。けれども、冒険者に身をやつしながらも、今でもその幻影を渇望している。世間知らずで、まだ年若いが大仰な口調を用いる。」という具合。
 お気楽冒険者スタイルの設定が多かった他PCからすると、別世界の住人に近かった気もしますが・・・ある程度きちっとした設定を付けないと、セッションへの集中力が落ちるので、ご容赦ください、ということで。
 なお、単発にしては少し凝った設定を付けることは少なくありませんが、GMに拾ってもらおうとは思わないし、セッションに無理矢理反映させることは一切しません。あくまで自己満足の領分です。


 さて、この設定からすると、貧しさに足掻く人々よりも、ユニコーンの方に共感するのではないかと考えました。森育ちということもありますからね。
 このキャラクターが、村人とユニコーンの二択からどちらを選ぶかといえば、当然のように後者となります。その動機にそうならば、ここで村人を襲うユニコーンは放置してでも、密売人を押さえにかかるのが自然と思われました。


 戦術上有利な行動を選択しようとしたという動機が皆無とは、自分でも信じてません。
 しかし、物語をどのように動かしたいかというプレイヤーおよびキャラクターの要求こそが、アイデアと行動に至った根っこなのです。


 属しているサークルの文化では、こういった行動は十分許容範囲とされています。
 後でお二人のOBに聞いてみたところ、GMが「危険性があるのに設定を却下しなかった」ことと「行動を逆手にとってPCをピンチに陥らせる権利を行使している」ことから、全然問題ないとの判断でした。
 こういった風潮は、僕が現役だった頃からさほど変わっていません。
 僕にとってRPGとは、プレイヤーとキャラクターの思惑がGMの準備した状況に交錯するような、ストーリーを動かしていくゲームが根底にあったのだと思います。
 だからこそ、半年前に海外インディ系のストーリー・ゲームに出会ったとき、あまり違和感なく受容していったのだろうとも。


 このケースの問題は、戦闘を求めていた新人さんの意向に頓着せず、セッションをローリスク・ハイリターン路線へと移行させたことにあります。ほんと、これだけは申し訳ない限りです。