断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

resolution再考(2)

 今回はGMとしてCRシステムの運用上、留意している点について少し書いてみます。


 CRの重要な利点に、PCのとれる行動がルールの規定を乗り越え、建前上はプレイヤーの想像力が及ぶ範囲まで広がることがあげられるでしょう。
 例えば「名士として振る舞っている悪党の失言を誘う」「相手の顔に屈辱的な傷跡を付ける」「驚かせることで悲鳴を上げさせる」などの、ルールではまずカバーされない行動を、プレイヤーからの提案で試みることが可能となるのです。
 これらは従来のRPGにおいて、GMの協力を得て演出的に処理されてきた事柄だと思います。
 より細かな演出や、力強くセッションを揺り動かす権限がプレイヤーに与えられることによって、物語は多彩に色づけされるわけですね。


 さて、先に「建前上は」と書いのは、この権限が無制限ではないことに依拠します。
 PCの取り得る行動は、世界観、キャラクター設定、そしてなにより参加者のコンセンサスに反しないものに限られます。
 たとえどれほど面白くても「脅迫のために地球破壊爆弾を取り出す」「火星から地球までテレポートする」「頭部を冷凍して切り取り、カバンに詰めることで密航する」などが通る状況は、少ないでしょう。
 GMが頭ごなしに否定するのは、環境によっては角が立ちかねないので避けた方がいいと考えられます。
 常識外れの行動を取るためには参加者全員の賛成が必要という了解を事前に取り付け、必要とあらば決を採るようにするのが無難です。目的のためにどのような手段を執るのか、プレイヤーに尋ねて考えさせるのも有効でしょう。


 加えて判定に成功したからといって、プレイヤーの望んだ結果を、GMは必ずしも瑕なきままにもたらす必要はありません。
 PCが目の前の難関を、思うように解決していくだけのセッションは一本調子で面白みを欠きます。時にはひねりを加えることで物語を転調させ、プレイヤーの予想を裏切ることで緊張感を与えましょう。
 プレイヤーが宣言した行動の隙(配慮されていない事柄)は見逃さないようにしてください。
 失敗した際は、遠慮無く危機的な状況に直面させてやりましょう。といっても蟻の這いでる隙間もない状態に追い込むのではなく、PCの次の行動を誘発するものが好ましいと考えられます。
 人間、追い込まれたり焦ったりすると突拍子もないことを思いついたり、衝動的な動作を行ってしまうものです。状況の混乱とその収拾は、ストーリーを予想もつかない方向へと導くファクターとなりえるのです。
#なので僕はダイス目などによる事故を、チャンスだと考えます


 ただし、この匙加減には特に注意が必要です。
 先の記事にも書いたとおり、GMの横暴と取られかねない要素を含んでいるからです。
 GMはセッションを開始する前に、自分なりの判断基準(たとえば説得系の判定に成功しても、無理強いであればNPCの意志をねじ曲げることはできない等)をいくつか定め、プレイヤーに了解を取っておくのが安全でしょう。それまでTRを用いるシステムだけで遊んできたプレイヤーには特に。


 大切なのは、セッションごと、あるいはキャンペーンごとのフィクションを、参加者全員が共有するよう仕向けることです。たいていはシステムごとに、フィクションを補強する何らかの仕掛けが施されているはずなので、それを積極的に用いていきましょう。
 いったんフィクション(世界観など)を共通認識にすることができれば、ゲームはスムーズに進行するようになります。これはRPG全般にも言えることなのですが、プレイヤーの比重が大きいCRを用いるシステムでは殊更重視すべき事項です。
 RPG Innovationsなどを見る限り、CRの嚆矢はHero Warsにあったとされています。グローランサという豊かな背景世界を参加者がある程度共有する環境が、CR的な処理を許容する土壌になったのではないかと、僕は勝手に予想しています。
#Hero Warsの影響はCRにとどまりませんが