断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

蜃気楼に魅入られて

 うちが現役の頃、説得シナリオという形態がサークルの同世代(の一部?)で流行っていました。
 読んで字のごとく、PCがNPCを判定など無しで説得することをクライマックスに持ってくるシナリオのことです。
 敵対NPCは共感の余地ある人物(ぶっちゃけヒロイン率高め)であり、説得できなければそのNPCと戦闘になる(すなわち殺さねばならない状況に追いやられる)のが定番でした。


 かくいう自分もずいぶん影響を受けました。
 ただこれをやろうとすると、説得を盛り上げるためにも、PCではなくプレイヤーをNPCに共感させる必要が出てきます。
 そのためには、プレイヤーに作用する仕掛けの準備と、GMの演技力と、プレイヤーの対応力、など様々な労力&能力が求められます。
 なによりも、フィクションを参加者全員が共有するために、場の雰囲気を熟成させるセッション時間が必須です。
 GMが手渡した「NPC1は君にとって無二の親友」という紙切れ一枚の設定ではなく、プレイヤーがNPC1を失いたくないと思い、自ら行動を起こさなくては、成り立たないものだからです。


 間延びしたあげく失敗するセッションもありましたが、幸いにも自分はプレイヤーとして、成功した幾つかに参加する機会を得ました。
 そこで、その場限りのフィクションが織りなす、きらめく“魔法”を目にしたのです。
 自分が現在試行錯誤している、プレイヤーから何かを引き出すGMスタイルは、その幻影をどこかで追い続けているとも言えます。
 もちろんもっと敷居を下げた形で、ですが。
#あくまで自らの目標であり、他の参加者に強制はしません
#DitVやAWでは、システム的なアプローチから、
#類似した試みが行われていると、自分は解釈しています。


 お約束に沿った形でキャラクターが煩悶する小芝居は容易で、それなりの満足感をもたらすでしょう。
 けれどもそれは、良質な手品に過ぎず、魔法ではないのです。
 「たかだかゲーム」だからこそ、一つぐらいはこだわりをもって遊びたいものです。