断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Lady BlackbirdにおけるGMの役割

 一応Lady Blackbirdを持っていこうと思い、ハンドアウトの手直しをしております。
 このゲーム、付属ルールは非常に簡略化されているのですが、主要なベースとなっているのはThe Shadow of Yesterday(鍵と秘密)とMouse Guard RPG(ダイス振りとコンディション)だと考えられます。で、このモジュールは、PC間の相互関係と状況への応対がメインで、いわゆるシナリオは付属していません。出現しうる障害と、難易度の例がいくつか挙げられているのみです。


 GMのスタイルとして、「PCひいてはプレイヤー間でピンポンが発生するように仕向ける」こと、「そのやりとりを注意深く聞いて設定を拾い上げる」こと、「それを元にして魅力的、あるいはプレイヤーの興味をそそる障害を配置する」こと、以上のことはするなと明記されています。GM側からの予断を持った誘導に関しては、特に戒められています(前回はちょっとやっちゃったけど)。
 プール・ダイスおよびコンディションの回復が、PC同士でやりとりしてキャラクターの一側面を提示する(意外な性格とか過去とか)ことによってなされるルールなので、セッション中はどんどん新たな設定が現れます。その中から、後の展開に関わるものを見出し、道を補強していくのです。
 メインのストーリーライン、すなわち「帝国の貴族令嬢が運び屋を雇って、見合い結婚から逃げ出し、かつての恋人であった海賊の王に会いに行く」は固定されています。しかし、上の通り運用すると、セッションごとに展開や形作られる物語が全く異なったものとなるでしょう。前回だと、帝国は尋常じゃない退廃に歪み、運び屋はかつて海賊船ごと味方艦を沈めたため追放された帝国軍人で、海賊王はかつての右腕に裏切られ追い詰められ、その男が想いを寄せていたレディ・ブラックバードに言い寄ったりもしました。全てPCの発言から拾った設定であり、これらに関しては一切誘導などを行っていません。


 結末としては、PCたち一行が窮地に陥った海賊王を助け、レディは初志貫徹することとなりました。しかし、次に遊ぶときは、ひょっとすると「レディに惚れ込んだ運び屋船長が海賊王と決闘する」かもしれませんし、「帝国とも海賊とも対立して、安住の地を求めて辺境を彷徨う」かもしれません。GMにさえ、実際に遊んでみなければ予測不可能なのです。
 うまくやれば、GMのスタイルとして提示されている3項目は響き合い、次々と新たな展開を呼び込むでしょう。何よりも重要なのは、3番目の「魅力的な障害を準備する」ことです。プレイヤーの好き勝手にさせるセッションは面白いのですが、全て叶えられては感慨など生じません。PCの目的や欲望があり、そこに立ちふさがる興味深い障害との対立が発生させる。それこそがドラマを産み落とすのです(ここ二週間以内に、どこかでそういった内容の記事を読んだのですが、場所を見つけられませんでした・・・)。


 もちろん欠点もあります。前回気がついたのは3つ。
 一つ目は、なにかにつけてダイスを大量に振ること。ロールを挟み込むタイミングが悪くて話の腰を折ったり、プレイヤーに冗長な感想を抱かせないよう注意を払うことが必要です。
 二つ目は、プレイヤーが積極的に設定や物語のパーツを提示しなければならない(そうしないと回復できない)ことです。とっさに作れない人もいるでしょうし、下手をするとそういったことに手慣れたプレイヤーが美味しいシーンを全て持っていくことになりかねません。GM並びにプレイヤー全員の協力と、共同作業としてストーリーを作っているのだという了解を取っておく必要があるでしょう。ぶっちゃけすぎると興ざめになりかねないので、面子によってさじ加減を調整するのが望ましいでしょう。
 三つ目は、コンディション周りのルールがほとんど説明ないまま放り投げられていること(Mouse Guard RPGを読んでいるのが前提なのかも)。実際、ペナルティの類も存在しませんし、プレイヤーに適度なストレスを与え、状況をエスカレートさせるためのフレーバーの側面が強いでしょう。説明ができるのなら、死亡しても帰ってこられますからね。プレイヤーにぶっちゃけちゃうと、弛緩しきった雰囲気に陥る危険もあるので、GMがそれなりのガイドラインを決めて運用するのが無難と思われます。


 なんだかんだで、Lady Blackbirdネタでこれだけだらだら書けてしまうということは、結構気に入ってますね、私。米国のクリエイティブ・コモンズ3.0(表示-非営利-継承)準拠なので、訳したものの再配布は可能みたいですが、テキトー訳が恥ずかしすぎるからやめておこっと・・・。