断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

Life on Mars

 どっかに書いたののほぼ丸写し感想。


 邦題は『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』だけど、あまりにひどいので原題で。
 2006年、2007年の2シーズン、計16話で構成されるBBC製作の刑事ドラマです。
http://www.mystery.co.jp/program/jikuu.html
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 2006年の警部サム・タイラーが交通事故に遭い昏睡状態に陥る。
 ところが、次の瞬間彼は1973年の警部補として、あまりにリアルな世界にいることに気がつく。
 まともな科学捜査も確立されておらず、やり方も荒っぽい1973年で、一癖も二癖もある同僚たちと共に事件解決に奔走することとなる。
 元の世界に戻る(昏睡状態から覚醒する)方法を探しながら・・・。


 というのが基本設定です。
 『Life on Mars』というタイトルは、デイビッド・ボウイの曲Life on Mars?(1971)より。
 サムが事故にあった際、iPodでかけていたのがこの曲であり、もちろん異世界である1973年に馴染めない彼の心情を現しています。この曲は1話、8話、16話のいずれも印象に残るシーンで使われており、シリーズの根底に流れるテーマに関わっています。
 「1973年の刑事が発狂した」のか「昏睡中の夢」なのか「本当にタイムスリップ」したのか、あるいはその複合なのか?
 謎を孕みつつストーリーは展開していくわけですが、面白さの肝はそういったSF的設定ではありません。
 当時の風俗や、僅か30数年前なのにあまりに現代と異なる社会通念、そしてなによりも主人公サム・タイラーと部署のボスである暴力警部ジーン・ハントのでこぼこコンビぶりが作品の魅力と言えるでしょう。


 そして最終回では、設定を生かした形で少しびっくりする結末へと繋がります。
 イギリスの作品らしく、前向きな希望と突き放した冷たさが同席するアイロニーを含んだ終わり方であり、高評価。
 一話目から伏線は張られており、計算ずくの物語構造がメタ視点を絡め展開する様は、ストーリー作りの上でも興味深いものがあります。


 とはいえ、結末へと繋がるSF展開や入れ子構造の妙はあくまで外枠です。
 基本は1973年を舞台にした癖のある刑事ドラマを楽しめる人向き。
 苦みの残る話もいくつかあり、おもろいですよ。


 なお、スピンオフ作品である『Ashes to Ashes』が現在英国で放送中の模様。
 こちらは1981年のロンドンを舞台に、共通するキャラクターと設定を用いたドラマのようです。