断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

悪夢から覚める、の範囲は?

 というわけでナイトメアハンター=ディープ(以下NHD)のシナリオを真面目に組み立て始めました。その過程でどうしても気になる点が出て来たのでメモ書き程度に。
 NHDで起こる事件は、ナイトメアが現実世界を悪夢化させて歪めたものとされます。つまりナイトメアを消滅させれば、その悪夢の関わった事件も夢から覚めるように霧散するということです。ルール的にはナイトメアによって失われたものは全て取り返すことができると記述されており、付属シナリオやR&R誌掲載のリプレイとシナリオを見る限り、犠牲者や物品の損害もなかったこととして全て元通りになるようです。失われたままのものは主に心の問題(事件を起こしたことによる心の傷など)とされています。コミカルなシナリオなら何の問題もないし、救いがもたらすカタルシスは暗い事件の締めとしてよいものでしょう。
 けれども、割り切ることができるプレイヤーを相手にした場合に困る事態を生み出すかもしれません。例えば立て続けに人が襲われるような事件が起こった場合、通常の感覚だと「これ以上の犠牲者を出さないために犯人を突き止める」とかなるわけですが、ナイトメア消滅時になかったことになるのが明らかなら「放置してより多くの事件を起こさせることで傾向を分析して、ナイトメアの宿主とその動機を絞ろう」という判断も成り立ちかねないからです。これは、街が洪水に沈もうが犠牲者が100人出ようが同じなので、緊迫感や感情移入を削ぐことにもなりかねません。
 ゲームマスターがとれる対策としては「放置しておくとナイトメアが宿主を食い尽くして別の取憑き先を探すから、捕まえるのがさらに難しくなるよ」と警告を出すぐらいでしょうか。そうしたとしても、ハードルが時間制限になるだけで、犠牲による焦燥感や感情的揺さぶりはほとんど意味をなさないままです。一応ルールブックには別項で「その悪夢から何を取り戻すことができ、何を取り戻すことができなかったのか」設定しておくようには書かれています。なので細かくはゲームマスター裁量なのでしょうが、犠牲者は帰ってこないとかにするのも極端なので、自分なりの基準を考えてみることにしました。

  • 1.PCの行動が招いた犠牲は取り返せない
  • 2.犠牲の発生から長時間経つとそれは現実化する
  • 3.あまりに多くの人を巻き込む悪夢はその断片を残す

 ちと厳しいかもしれませんが、自分でGMをする場合はこれぐらいの決まり事を作っておきたい気もします。1番目はPCの行動は悪夢を塗り替える夢の力なので、その結果生じた良きことも悪しきことも残るだろうという判断。2番目の理屈は、最初は悪夢であっても長期にわたる存在の欠損は、それ自体が周りにとっての現実へと変化していくだろうという考え。3番目は2番目と同じく、多くの人が現実を歪められたら、ナイトメアを倒しても何らかの形で歪みが残ってしまう可能性です(若干Mageの世界観的な解釈)。
 夢、悪夢、現実の関わりが(シナリオ作成の足枷にならぬように)プレイヤーとゲームマスターに丸投げにされている観があるので、NHDはツッコミ始めるといろいろ矛盾がみえてくる世界観です。妙に倫理的縛り(一般人にはダイブしてはならない等)がある割には肝心なところが抜けていたりするのが何とも。あるいは、上記のような思考をするプレイヤーはNHD向きじゃないってことなのかもしれないけど、それは考えない方向で一つ(笑)。