断片の物置、跡地

記憶の断片が散乱するがらくた置き場

薪の結婚

 主にはTRPG用のメモなんですが、本はシナリオの元になっていることもあるので、感想なぞも書いてみようかと。
 『薪の結婚』は『月の骨』『死者の書』『炎の眠り』などで知られるジョナサン・キャロルの小説です。今年4月に訳が出たばかりなんですが、7月に購入して、積ん読になっておりました。内容をぐだぐだ語っても仕方ないのでここではざっくりと。

結局のところ、わたしたち一人一人に、語るべき唯一の物語がある。その物語を生きるには一生かかるけれど、それを話すには一時間とかからないこともある。

 TRPGの参考としては、魅力的な登場人物たちでしょうか。個性の付け方が実にうまい。また、『深淵』の「夢歩き」ではありませんが、やたら幻視のシーンが多いです。こういう切り口だと、不安は感じるけど、それが先立つから恐怖感はいまいちだな、とかよくわかります。物語自体が回想の形をとっているのですが、そこで語り残されたことが、外枠の物語で結末をある意味変えるという展開も好みです。メタ的とも言えるので直接RPGには使えませんが、なにか生かす工夫がないかな、とか考えると楽しめます。


追記:
 これだけだとわけわからなさすぎるので、内容について少しだけ補足します。ネタバレにならないように中身に触れるのは難しいですね。
 この本は隠された自らの正体と対峙することを強要された女性の話です。『炎の眠り』が自らの物語を解き明かした結果悪夢のような結末を迎えるのに対し、老婆による回想という形式をとるこちらの物語は、物語の重要な要素を語らなかったことが最後で希望に繋がる形をとるのが興味深い。といってもやっぱり底意地の悪さは健在なんですが。